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動揺

side 蒼牙 仕事の休憩時間、休日とあってレストランは賑やかで、いつもよりも遅れてスタッフルームに入る。 「ハァ…。」 この二日間、出るのは溜め息ばかりでちっとも笑えない。 椅子に項垂れ溜め息をついていると、先に休んでいた同僚の井上さんに声を掛けられる。 「お疲れさまだね、秋山くん。今日忙しいもんね。」 「…そうですね。」 本当は疲れからの溜め息なんかじゃないけど、それを説明する義理もない。 適当に話を合わせ、その場をやり過ごそうとする。 「ねぇ、今日仕事終わったら食事に行かない?美味しいお店見つけたんだ。」 いつの間に側まで来ていたのか、すぐ隣の椅子に座って俺に手を伸ばしてくる。 まただ。 苦手なんだよ、こういうの。 自分に向けられる好意はありがたいけど、俺にそのつもりがないから断るしかない。 「ありがとうございます。でも今日は用事があるんで。」 でもこれで諦めてくれないんだよね…いつも。 「そうなんだ。じゃあ、いつなら空いてる?」 ほら。 いい加減にしてよ。 こっちにはそのつもりが無いんだから。 「んー…」 どうやって断ろうか…そんなことを考えていると、ポケットの中に入れていたスマホが震える。 助かった! 「ゴメンね、電話だ」 一言謝ってスマホを確認する。 「……!!」 名前を確認した途端に心臓がバクバクと音をたてる。 少し震える指先で画面をタッチして、ゆっくりと電話に出た。 「はい、秋山です。」 『…篠崎だけど。』 焦がれていた声に心拍数が一気に上がるのが分かった。

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