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想い
side 蒼牙
悠さんに誘われて入った居酒屋で勧められるままに料理を食べ、酒を飲む。
吸血鬼の血を引いているからか、それとも只の体質からなのか知らないが、俺はアルコールに酔ったことがない。
でも悠さんは違うから、少しずつ酔いが回ってきたのか、たくさん話をして笑って、楽しそうな姿を見ているだけで十分だった。
二日前、変な別れ方をしてしまい、嫌われたんじゃないかと怖くて溜め息ばかりだったのに…今はこうして笑いあっている。
本当にそれだけで十分だと思ったんだ。
「…感想は?嫌じゃなかった?」
だから急に悠さんからキスをされて、びっくりしすぎて変な顔になっていたかもしれない。
触れるだけのキスだったけど、唇が凄く熱い。
「…柔らかかったです。」
ドキドキしすぎて変な事を言ってしまった。
だけど貴方は「そ、そう。」と俯くから、その姿が凄く愛しくて。
「もう一回、良いですか?」
顔を上げた貴方に今度は俺から口付けた。
途端に貴方の香りが口に広がり、押し当てていた唇が熱をもつ。
柔らかい、
暖かい、
……甘い。
少し離してはまた押し当てる。
頭がクラクラする。身体中が熱をもち、貴方の香りに包まれて目眩がしそうだ。
あぁ、アルコールに酔うってこういう感覚なのかもしれない。
もう一回…とか言いながら、何度も唇を押し当てているとクスクスと笑い声が聞こえた。
「ながいよ。」
笑いながら俺から離れようとするから、「すみません。」と素直に謝った。
すると「やっぱり可愛いな、お前。」とか言いながら頭を撫でられた。
心臓がドキドキとうるさい。
触れたい。
もっと貴方を感じたい。
だけど、まだちゃんと想いを伝えていないから…。
先に動いてくれたのは貴方だから、今度は俺から伝えたいんです。
「悠さん。」
頭を撫でていた手を握り目を見つめれば、「ん?」と優しく返される。
心臓が壊れそう。
もしかしたら貴方にまで聞こえているんじゃないだろうか。
握っていた手とは反対の手で悠さんの頬に触れた。
「貴方が好きです。」
想いを込めて告げる。
…どうか、ちゃんと届きますように。
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