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恋人

耳元で聞こえる声に、背中にゾクゾクしたものが走る。 ちくしょう、俺のが年上だぞ…と思いながらも、その腕の中は心地よくて離れられない。 「…。」 抱き締められた腕が片方外され、頭を撫でられる。 さっきは俺が撫でてたのに…犬みたいで可愛かったな… とか考えていたら、秋山くんの唇がこめかみに当てられ、頭、耳、顎とだんだん下がってくる。 また口に口付けられそうになり、慌てて体を離した。 「何で逃げるの。」 少しムッとした声にワタワタと答える。 「無理!もう恥ずかしくて限界です!」 つい敬語で言い返すと、ニッコリと笑いながら 「いっぱいキスしてたら恥ずかしくなくなるよ。」 と顔を両手で挟まれた。 「…ほんと、勘弁してくれ…。」 情けなくも弱々しい声になり、眉が下がるのが自分でも分かった。 すると「仕方ないな。」と声がして、 チュッ と瞼にキスが落とされた。 「悠さんの可愛い顔見れたし、今日はこれで我慢してやるよ。」 そう言うとゆっくりと体を離してグラスに手を伸ばし、溶けた氷の入った酒を煽る。 …助かった…。 ……。 ………ん? コイツ、いつの間にかスイッチが切り替わってないか…? 恐る恐る顔を見ると、 「もしかして、今頃気付いた?」 と綺麗な、だけどどこか意地悪な表情の笑顔を向けられた。 …やっぱり! 「いつから!?」 驚きに大きな声を出すと、クスクスと笑いながら 「さぁ?いつからだろうな。」 とすっとぼける。 「お前…ふざけんなよ…。」 呆れ半分、ドキドキ半分で呟くと、伸びてきた手がまた顔に触れる。 「だけど好きなんだろ?」 さっきとは違う優しい笑顔に一気に心拍数が上がる。 あぁ、そうだよ! 「調子に乗るな。」 気持ちとは裏腹にそう言うと、俺は自分の席に戻り温くなったビールに手を伸ばした。 相変わらず向かいではクスクスと笑う秋山くんがいて。 どうやら俺はとんでもない奴を恋人にしたらしい、と感じずにはいられなかった。

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