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5月19日 夕

昼食が終わり温泉街をブラついた。 それでも早く悠さんと寛ぎたくて、チェックインの3時丁度に旅館に入った。 仲居さんの案内のもと通された部屋は、室内露天が付いた立派な部屋だった。 「悠さん…ここ、」 想像していたよりもランクの高い部屋に、悠さんを振り返った。 『旅館は俺が選ぶから、祝いをさせてくれ。』 計画を立てる際に悠さんから申し出た言葉を思い出す。 「うん、綺麗な部屋だな。おー露天も立派!」 室内を見て回る悠さんを追いかけて一緒に回る。 「ホント、こんな良い部屋…高いでしょう?」 何だか申し訳なくなって小さく呟くと、クスッと笑う声が聞こえた。 「そんなに高くないよ。それに、あんまり俺の給料馬鹿にするなよ。伊達に大学出てないから。」 そう言って座椅子に座り、仲居さんが淹れてくれたお茶を飲み始める。 「素直に喜んでくれたら、それが一番嬉しい。」 俺を見る目が優しく細められた。 「…はい、ありがとうございます。」 嬉しくて、座った悠さんの体を横から抱き締めた。 「ん、それと…。」 悠さんは俺の腕から逃れると、部屋の隅に置いていた旅行鞄から何かを取り出した。 「…蒼牙、誕生日おめでとう。」 言葉と共に突き出された小さな箱。 「あ…ありがとうございます。」 ビックリしてしまい、受け取るのが一瞬遅くなってしまった。 旅館だけでも充分なのに、まさかプレゼントまで準備してくれていたなんて…。 嬉しすぎて目の前の悠さんを強く抱き締めた。 「本当にありがとうございます。」 「…ンッ…」 瞳を見つめお礼を言うと、そのまま優しく口付けた。 チュッ、チュッと吸い付くと、悠さんの唇が僅かに開かれる。 直ぐ様舌を差し込み、深い口付けに変えた。 チュクッ、チュッ、ピチャ… 舌が触れ合う音と背中に回された手の温もりに、身体が熱くなっていく。 「ンッ…ハァ…蒼牙、開けないのか…?」 押し倒そうとしたその時、悠さんが囁き我に返った。 「…すみません。あまりにも嬉しくてガッツイちゃいました。」 ゆっくりと身体を離し、プレゼントを手に持つ。 リボンをほどき、丁寧に箱を開けていった。 「…ッ…凄く、嬉しいです。」 中を確認し、それを取り出しながら悠さんを見つめた。 俺の手の中には、蒼い文字盤の趣味の良い腕時計が光っていたー。

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