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デートしましょう(リク作品)

side 蒼牙 悠さんのおじいちゃんとおばあちゃんが昼の新幹線で帰ってしまった。 思っていたよりも早くに帰ってしまい、午後がまるまる空くこととなった。 「悠さん、せっかくだからデートしませんか?最近、あんまり外出できなかったし。」 「デート?」 「はい、デートです。」 おじいちゃん達を見送り、少し寂しそうな悠さんに微笑みかける。 芦屋さんの取材や悠さんの仕事の都合で、ここ数週間二人で外出をしていない。 別にもともとそれほど外出するほうではないし、悠さんと二人でゆっくり過ごす方が好きだがたまにはデートも良いと思う。 「美味しいもの食べて、買い物したり映画観たり···そんなデートしましょう。」 「ん、いいよ。」 そう提案すると悠さんはニッと笑って了承してくれた。 その笑顔がかっこよくて、やっぱり家に帰ってイチャイチャするのも良いかも···とか思ってしまう。 「じゃあ、はい。」 「····なんだ、これは。」 ニコニコと悠さんに手を差し出せば軽く睨まれた。 「だってデートですし、手繋ぎたいです。」 そう言ってヒラヒラと振って見せると、少しだけ顔を赤らめた悠さんが慌てたように口を開いた。 「こんな公共の場でそんなこと出来るか!···俺にはハードルが高い。」 「えー···この間はベロチューまでしたのに···」 「それはッ!···思い出させるな!」 通行人がいる中で濃厚なキスを繰り広げたあの日のことを持ち出すと、ますます顔を赤く染めて怒られた。 その様子が可笑しくてクスクスと笑っていると脇腹を殴られてしまったけど。 「いててて、ごめんなさい。じゃあ手は繋がなくて良いですから、今日は俺の行ってみたかったところに付き合って下さい。」 「···行ってみたかったところ?」 「はい。」 少し怪訝な顔を見せるあたり勘が鋭い。 ニコニコと笑顔を見せる俺に「···変なこと考えてないか?」と警戒しているのが可愛い。 「考えてないですよ。ほら、行きましょう。」 「え、ちょっと···」 悠さんの肩に腕を回し、グイッと引き寄せ歩き始める。 「これじゃあ手を繋ぐのと一緒だろうが!」 「そんなことないですよ。それに誰も気にしてないですって。恥ずかしかったら下向いてて下さい。」 「····くそっ··もう、好きにしろ。」 「はい、好きにします。」 「ッ!」 素っ気ない口調は悠さんが照れているときだ。 そんな様子が可愛くて、こめかみにチュッと軽くキスを落とした。 「おま、好きにしすぎだろ····!」 「そうですか?こんなの、まだ序の口でしょ。俺が本気で好きにしたらもっとすごいことになります。」 「なっ!」 「ね?」 途端に真っ赤になるのに微笑んで見せ、肩を抱く腕に力を込めた。 ···楽しみだな。 あの空間に入ったら、この人はどんな反応を見せるのだろうか。 視線を反らしてしまった悠さんの頭にもう一度キスを落とす。 久しぶりの悠さんとの『デート』に浮かれている自分を自覚しつつ、俺は目的の場所へと向かっていったー。

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