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第16話 好きだから

 知矢はいつも兄がするようにその喉元に吸い付き、思い切り吸い上げた。 「明日は首筋がよく見える服を着て行ってね、お兄ちゃん」  強い強い独占欲。お兄ちゃんは僕だけのものなんだから。 「分かった。……知矢」  典夫が嬉しそうに微笑む。  流石に高校生の弟の目立つ場所に同じようにキスマークはつけられないからだろう、代わりに息も止まりそうなくらいきつく抱きしめてくれた。 「ねー、お兄ちゃん。僕、お兄ちゃんが不安になったりするって知らなかった」  暖かな兄の腕の中でそう呟くと、兄は苦笑する。 「何言ってるんだよ。俺だって人間なんだから、おまえのこと好きな分不安だって大きいよ。ましてや俺たちは兄弟だしな」 「おにいちゃんいつまでも僕の傍にいてね」 「当たり前だよ。知矢こそ永遠に俺のものでいろよ。っていうか永遠に離さないから」  甘い睦言とともに二人はどちらからともなくキスを交わした。  実の兄弟で愛し合うということは決して周りから祝福をされないということだ。  それどころか忌避されてしまうこと。  両親や親戚たちからは絶縁され、友人たちからは後ろ指をさされる。  そんな未来が待っていたとしても仕方がない。  でも、それでも好きだから。  世界中の全てに反対されても、好きだから。  ただ一途にお互いだけが好きだから……。

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