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第17話 唯一の恋人

        ***  知矢が小さな口をいっぱいに開けて俺の雄を頬張っている。  知矢のたどたどしいフェラチオ。勿論気持ちいいのだが、その一生懸命さを見てると快楽よりも弟の愛を独り占めしている幸福感の方が勝つ。 「もういいよ、知矢、しんどいだろ」  俺が自分の雄を知矢の口から抜くと、バンビのような愛くるしい目を不安に曇らせる。 「僕がするの、気持ちよくない? お兄ちゃん」  そしてまた俺のをくわえようとしてくる。その姿も可愛くて愛おしい。 「違うよ、知矢がしてくれるの、とても気持ちいいよ。でも俺、止まらなくなって、おまえの喉まで突いちゃうだろ? ……知矢に苦しい思いさせたくないんだ」  そんなふうに言うと、知矢は真っ赤になって俯いた。サラリと長くなった髪が揺れる。  自分とそっくりの髪質と髪の色。でも、少女のような面立ちの知矢の髪の方がずっとずっと綺麗に感じる。  ……やっぱりこれ以上伸ばさせたらいけないな。男にナンパされたり、下手をしたら誘拐されそうだ。  知矢ほど綺麗な存在を俺は知らない。  可愛すぎる弟を持った兄の気持ちは本当に複雑だ。 「お兄ちゃん、何考えてるの?」  知矢が少し拗ねたような顔で聞いて来る。 「知矢のことだよ」  知矢の顔が綻ぶ。可愛い。俺の心はいつでも知矢のことでいっぱいだ。  あのとき……好きなタイプを聞かれたときも本当は『弟』それしかない。  しかしさすがにそう答えることはできないから。 「髪の綺麗な子」と返したのだが、あれだって実は知矢のことだ。  どんな綺麗なロングヘアも敵わない。  セックスのとき、しっとりと肌に張り付く髪の扇情さ。  騎乗位のとき、淫らに腰をくねらせ身体を反らせる度に汗が宝石のように煌めく様子は眩しいくらい綺麗で。  本当に時々怖くなる。知矢が俺から離れて行ったらどうしようと。  こんなに美しい存在が俺の恋人なんだといっそカミングアウトしてしまいたい気持ちと、部屋に閉じ込めて誰にも見せたくない気持ちと相反する気持ちがせめぎ合う。  俺のために伸ばしていたという髪……明日には以前の長さまで切ってもらうけど……を両手ですきながら知矢の瞳を覗き込んで囁く。 「上に乗っかってくれる? 知矢」                        了

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