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第2話

 俺の兄、佐々木啓太は中国雑貨の会社を経営している。櫻花貿易公司という社名で、おもに工場で大量生産した雑貨を日本の会社に卸している。  そしてそれ以外に、自分が気に入った工芸品やら民族雑貨を衝動買いしてしまう悪い癖がある。  兄曰く、流通も生産体制も整っていないから見つけたときに買わないと二度と出会えない、商品との出会いは一期一会なのだと。  正直言って、俺にはそんなたいそうな品物のようには思えない。まあ、何を見たって俺にはよくわからないんだけど。  大体、中国って国はわけがわからない。  俺は中国に行ったことはないけど兄の話を聞いているとそう思う。兄は買付けに来ないかと誘ってくれるが、絶対に行きたくない。  中国だけじゃなく、ほかのどんな国でもだけど。そもそも俺は海外に行きたいと思ったことがない。アメリカでもヨーロッパでもごめんだ。  兄は俺と全然違う。  性格も趣味もあまりに違うので、兄弟とは思えないとよく言われる。  自分でもそう思うが、俺は兄が嫌いじゃない。兄は細かいことは気にしない大らかな性格で、いつも俺の味方をしてくれるからだ。  五つ上の兄の啓太は小さい頃から常に俺の味方だった。難しい算数からも怖い犬からも近所の悪がきからも俺を守ってくれる頼もしい兄だった。  その兄の頼みなので、中国からの面倒な依頼も引き受けている。というか引き受けざるを得ない状況になっているというべきか。  食事を終えて食器を洗い、それから掃除機をかけた。月水金は掃除機をかける日と決めている。洗濯は晴れていれば火木土で、だから火木土は八時までには起きる。  いわゆる引きこもりの俺は、家にいていいけれども家事や身の回りのことはやるようにと親と取り決めているのだ。

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