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第37話※

歩が目を覚ました場所はベッドルームから外に続いている広い浴室だった。辻堂に抱き抱えられ、お湯に浸かっていた。 「ん…?伊織さん…僕…寝てましたか?」 「ほんの少しだ。疲れたか?」 ベッドで睦み合った後、気絶するように寝てしまったと気がつく。辻堂は一度では収まらず、何度も歩を求められたからだ。 「身体…大丈夫か?」 歩の首筋にキスをしながら辻堂は気遣う様子を見せる。途端、ベッドでの記憶が鮮明に蘇った。 (あそこ…こすって…) (いっぱい出して…奥にかけて…) 「うあぁぁ…」 「どうした、大丈夫か?」 「す、すいません…なんでもないです」 気持ちよくなり色々と口走っている自分を思い出して、歩は咄嗟に叫んでしまった。思い出しただけで赤面するほど、恥ずかしい。最後は辻堂の膝の上に座り、「自分で気持ちいいところに当ててみろ」と言われ自ら腰を振っていたと思う。辻堂は何度も何度も歩の中、奥深くに吐精していた。 そんな歩の気持ちを知る由もなく、辻堂は機嫌良く歩の頬にキスをしている。 「明日にはメンテナンス終了だ」 「僕のギフト停止中ですよね。今って本当に言語わかんないのかな」 「試してみるか」 そう言って、辻堂が話し始める。 「愛してる」 「ふふふ。それはわかりますよ」 「じゃあ…I love you…Je vous aime」 「英語とフランス語。両方とも愛してるでしょ。これもわかります」 「Seaghtmem tksihtoert」 「えっ?あ、わかんないです。どこの言葉だろう…本当だ、本当に言葉わからないです。へー、ギフト停止中にこんなことしたことなかったから、初めてです。やっぱり僕、ギフトないと言語はわからないや、うーんっと…なんて言ったんですか?」 「ブラン語で、愛してる結婚してくれだ」 辻堂のストレートな言葉に、歩の胸はぎゅっと締め付けられる。 「もうそろそろな…自宅を引き払って引っ越しして来てくれないか。プロポーズの返事も返して欲しい。俺も、言葉にしてもらわないと不安になる…」 身体中に温かい蜜がとろりと流れる気がした。辻堂のことが愛おしい。手の届かない人だと思っていた。いつも大人で、歩の密かな目標となる人である。そんな辻堂が歩に少し甘えているのを感じ、胸がドキドキし、辻堂への思いが溢れる。 「伊織さん…僕も伊織さんが好きです。愛してます。これからもずっとよろしくお願いします。不束者ですが」 「よし、ご両親に挨拶に行こう。それから歩のアパートは引き払うよう手配する。今のマンションが嫌なら他に家を購入してもいいぞ。歩の好きなところにしよう」 そう言うと辻堂は歩を抱えあげ、ジャグジーからベッドまで運ぶ。濡れたままだが辻堂は気にしない。強引な辻堂らしい行動と言動に歩は苦笑いをする。 宣言した通り、服を着る暇もないくらいだ。有言実行の男だなと思う。 「伊織さん、言葉って大事ですよね。こらからはたくさん言葉で伝えたいと思います。それと、メンテナンス終了したら、また仕事をたくさんしたいです。体調も回復してますし、通訳も翻訳もやりたいなぁ」 「ああ、俺も言葉で伝える。愛してる、歩」 新しいベッドに寝かされ、上から覆われ、鎖骨にキスをされる。いつも辻堂は首筋から鎖骨にかけて愛撫をしてくる。 「い、伊織さん…そこ好きですよね」 「ああ、犬はこんなもんだってルカも言ってたよな」 「へ?国王?犬?何の話ですか?」 二人の身体に燻っている火は意外と大きく、きっかけがあればすぐにつく。キスをして、身体を抱きあえばまたお互いを欲しくなる。 「俺は足りない。歩が欲しい」 「僕も欲しいです。伊織さん」 誰を気にすることもなく、時間も気にすることなく、好きな相手だけを感じることが出来るのは、気持ちがいい。 歩は、満たされるということを初めて味わった。フォルス社が行っているギフトメンテナンスは、身も心も満たされていくのがわかる。恋人や家族でメンテナンスに入る理由も、ここにいる間は、みんながギフトに頼らない時間を過ごすから素直になるんだと思う。 言葉と身体で歩の気持ちも落ち着いていき、不安や心配も薄らいでいく。ただただ、目の前にいる好きな人の肌と、その人の心を独り占めできることも、泣きそうなくらい嬉しい。 「歩…」 掠れた声が耳元に届く。辻堂のこの声が好きだ。 「ああんっ…」 辻堂の声に興奮し歩も絶頂する。 睦み合った後始末をしている辻堂はいつもなぜか楽しそうだ。歩もその行為に慣れてきているので、今ではもう辻堂のやりたいようにやらせている。 「メンテナンス終了楽しみです。言語アップデートされてるんですよね。いつもと違う豪華なメンテナンスだし、ワクワクするなぁ」 「言語は問題なく使えるし、体調が悪くなることもなくなるはずだ。俺もいるしな」 「よかった。ありがとうございます。 あ、そうだ。プカ語もアップデートされるんですよね。へへ、これでもう赤ちゃん語って言われなくなります。プカ語も大人の言葉で話が出来るようになれば、完璧です」 「…あ、」 「え?ですよね?全部アップデートですもんね」 「それはな…」 フフと辻堂は笑い、歩の上に覆い被さる。 「歩…もう一度」 「え?もう?やっ…ああっん…」 なんだか誤魔化されてるような気がしたが、大好きな辻堂の大きな手を取った。

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