1 / 6

1-1

魔法使いなんて長らく迫害の対象だったが、近頃急激に増えた魔物から国民を守る為少しでも戦力を増やしたい国王は藁にもすがる思いで迫害していた魔法使いたちに頭を下げた。何を今更と一蹴する者も多かったが国に協力すると答えた者も少なからずいた。但し、殆どは代わりに褒美を要求してきた。無償で危険に身を晒したい訳が無い。それは当然の感情だろうと思う。 「門番にオレンジ色の髪をしたかわいい子がいるだろう。あの子が凄く好みなんだ。是非ぶち犯させてくれ」 この内容だけは全く理解出来ない。何故、どうしてそこで俺が出てくるんだ。そもそもこいつは誰なんだ。なんで俺の事を知ってる。 最悪な事に、「まあ兵士の尻一つでいいなら……」なんて雰囲気でその魔法使いの要求はあっさり承諾された。俺は元から国への忠誠心が高い方では無かったけれど、この件で完全に無くなった。滅べこんな国。 ◇◇◇ 死ぬほど気が重い。城下町から少し外れた森の入口にある魔法使いへの家に向かいながら、このまま魔物共の所に行って市中へ誘引してやろうかなんて考えが頭の中で渦巻いていた。 「やあ、いらっしゃい! なんでも言ってみるものだね。本当に聞いてもらえるなんて思ってなかった」 俺を出迎えたのは青い髪の、随分若そうな男だった。ともすれば年下かもしれないと思うぐらいだった。まあ、魔法使いの見た目なんて当てにならないだろうけれど。 「さあさあ、上がってくれ。あ、これ履いてね」 さっと足元に置かれたのはどこでも売っていそうなスリッパだ。随分庶民的だなと思いつつ靴から履き替えた。 「君が来るのを心待ちにしてたんだ。いやあ、魔物が増えてくれて良かったよ。こんな機会でもないと合法的にレイプなんてそうそう出来ないからね」 「ああそう……」 魔法使いは俺とは対照的にそれはもう楽しそうだった。うきうきとかわくわくとか、そんな擬音が聞こえてきそうだ。 通された家の中は、物凄く普通で、何の変哲もない庶民の家、という感じだった。そもそも本人もどこにでも売ってる市販品の部屋着といった服装だから魔法使い感なんて皆無だ。 「あ、そうそう」 廊下を歩いていた魔法使いは突然立ち止まった。 「そのスリッパを履かないで家の廊下を歩いたら、防犯対策で電流が流れるようになってるから、絶対脱がないでね」 「……分かった」 ちらっと廊下に視線を落としてみるが、ただの木製の板にしか見えない。しかし、国が魔法使いだと認めている相手が言うのだから実際にそうなるんだろう。 「話がついてから指折り待ってたんだよ。部屋も君用に準備したんだ」 入るように促された部屋は、やっぱり何の変哲もない一般家庭の寝室にしか見えなかった。大きめのベッドが一つ置いてある。 「じゃあ、さっそくぶち犯させてね!」 殴って逃げたい。

ともだちにシェアしよう!