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第4話望んでなんていないのに★

 午後の講義は始まる五分前に、俺は教室へと入った。  少しざわつく室内の隅に座ろうとすると、前の席に座る同じゼミのやつが話しかけてきた。  癖のある黒髪に赤いメッシュをいれた、やんちゃっぽい青年。  水瀬亘(みなせわたる)。  彼は誰にでも気さくに話しかけるタチらしく、俺にも普通に接してくる。 「中庭で騒ぎあったの、あれ、お前だよな? すげえな電気びりびりしてて綺麗だったー」  ……綺麗?  水瀬はうっとりとした顔をして、頬杖ついている。 「綺麗って……綺麗?」  驚きのあまり、言われた言葉を繰り返す。  水瀬は俺の方を向くと、笑顔で言った。 「綺麗だったよ? 電気。ああいう派手な能力、僕、憧れちゃうなあ」  そんなにいいものだろうか。  俺には理解できない。 「別に。俺はもっと地味なんで良かったんだけど」  この町に住む多くの住人は、ちょっとした超能力を持っている。  なぜそんな力を持てるのか理由はわかってはいないが、使えるんだから仕方ない。  しかも、町を出るとたちまち力を失ってしまう。  だからこの土地に何か理由があるんだろうけれど、謎のままだった。 「僕は羨ましいけどな。なあ、羽入、いっしょにいたのって誰?」  一緒にいたやつ、いったいどっちの事だ。  浅木さんか、蒼也か。  俺は悩みそして、両方答えることにした。 「ひとりは、医学部の先輩で……もうひとりは……双子の弟」 「え、嘘、お前双子なの? あとから来たやつのことだよな、それ。全然似てねえじゃん」  いったい水瀬は、どこから見ていたんだろうか。  まあ、少ないとはいえ人はいたしな……  もしかしたら校舎のどこかからか見ていたのかもしれない。 「弟だよ。学部は違うけどな」  言いながら俺は、トートバッグから教科書などを取り出す。 「へえ。なんかお前の弟、怖い感じだったけど、仲いいの?」 「普通」  それ以外なんて答えればいいのか。  あいつの姿を思い出すと、胸に痛みが走る。  あいつ、今夜うちに来たりしねえだろうな。  そう思うと、ため息しか出なかった。  一日の講義を終え、俺は帰路につく。  大学から家までは自転車で十五分ほどだ。  途中スーパーで買い物をして家に着いたのが十九時過ぎ。  駐車場に車が止まっているのを見つけ、俺は思わず足を止めた。  逃げ出したい。  けれど、逃げてどこに行く?  厄介なことに、この家の合鍵を、蒼也は持っている。  家の灯りもついている、と言う事は、あいつが来ている、ってことだろう。  なんで来てるんだよ。  駐車場の隅に自転車を止め、俺は足取り重く玄関へと向かった。  震える手で鍵をさし、そして、ゆっくりと回す。  中に入ると、奥から出てきたのは見たくもない弟の姿だった。 「心配してきたんだけど、大丈夫、緋彩」  たしかに顔は、心配している表情をしている。  だけど俺は、その顔が怖かった。  震える手で玄関に鍵をかけ、息を大きく吸い、なるべく冷たい声で俺は言った。 「何しに来た」 「何しにって、緋彩が大学で力を暴走させかけたからだろう? 心配するのは当たり前じゃないか」  そんな心配、いらねえのに。  そう言ってお前がすることはひとつなんだから。 「俺は大丈夫だよ。お前、家に帰れよ。じゃないと怒られるのは俺なんだから」  特に母親は、蒼也がここに来ることを快く思っていない。  俺との関係について知ってんのかは知らないが、時おりメッセージが届き、蒼也をたぶらかすのはやめろ、と言ってくる。  そうじゃないのに。  実際は逆だと言うのに。  俺は蒼也を誘惑したことなんてない。  なのにこいつは、俺にその力を使って無理矢理抱くんだから。 「緋彩、顔色悪いじゃないか」 「それはお前がいるからだよ」  靴を脱ぎながら言い、俺は蒼也の横をすり抜ける。 「俺は緋彩のこと、こんなに心配してるのに?」 「そういうのはいらないって言ってるだろ。俺はひとりで大丈夫なんだから」  早く帰ってほしくて冷たい言葉を繰り返すが、蒼也は帰ろうとはしなかった。 「緋彩」  居間に入るなり腕を掴まれ、そして壁に身体を押し付けられる。  悲しげな双眸が俺を見つめている。  何でそんな顔するんだよ?  お前にとって俺は、ただの時間つぶしの玩具でしかないだろうに。 「なんで俺を拒むの」 「や、やめろよ蒼也。俺はまだメシ、くってない……」  自分の想い通りにならないからと、力を使うのは反則だろうに。  蒼也に対する拒否反応が、求める想いに変わってしまう。  俺は蒼也にしがみ付き、吐息を漏らす。 「蒼……俺……」  頭の後ろに手が回り、引き寄せられて蒼也が俺の耳元で囁く。 「なんで素直に俺を求めないの? なんで俺を頼らないの? 俺には緋彩しかいないのに」 「蒼……」  駄目なのに。  求めてはいけないのに。  蒼也の力によって俺は、拒むことができず、弟にしがみ付くしかできなかった。   「欲しいよね、兄さん? だってそう言う風に身体を変えたのは、俺なんだから」  そして蒼也は俺に唇を重ねた。  まだ夕飯喰ってねえって言うのに。  風呂で身体を洗われた後、そのまま俺は風呂で蒼也のモノを受け入れさせられていた。  湯船に手を突き、後ろから貫かれ俺は涙を流しながら腰を揺らす。  散々蒼也に開発された身体は、すぐに快楽に溺れ蒼也を求める。 「う、あぁ……蒼……奥、ヤダ……」 「嫌がる割には、俺のペニス、締め付けて離さないよね、兄さん? 緋彩はほんと、淫乱だよね。そうしたのは、俺だけど」  蒼也が求めるとき、俺は身体を開かされ、蒼也が求めるように中を締め付け喘ぎ声を上げる。  俺のどこがいいんだ、本当に。 「ねえ緋彩。もっと俺のこと頼ってよ。俺は、緋彩の弟なんだから」  それ、俺を貫きながら言う事かよ?  蒼也は俺の腰を掴み、激しく抽挿を繰り返しながらうわ言のように繰り返す。 「緋彩、ひいろ……大好きだよ、ひいろ……」 「ひ、あ……そ、う……だめ、だって……出る、から……」  びくびくん、と身体を震わせ、俺は達してしまう。  すると中が収縮し、蒼也のペニスをきゅうきゅうと締め付けた。 「やばっ……俺も出るよ、兄さん……」  上ずった声で言い、蒼也は動きを止めた。  腹の奥が熱い。  こいつ、中で出しやがった。  受け止めきれない精液が、隙間からあふれ出ていく。  腹壊すから、中には出すなと言ってるのに。   「あーあ……兄さんの中、俺のでいっぱいになっちゃった」  笑いながら言い、蒼也は俺の中から引き抜く。  そして、後孔に指を突っ込み、ぐちゃぐちゃに中をかき混ぜた。 「あ、あ……蒼、中、だめだって……敏感、なんだから……」 「イきなよ、緋彩。いっぱいイッて、俺の事だけ考えて?」  勝手なことを言いやがって。  俺は、お前に抱かれるのを望んではいないのに。

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