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第37話玄関で

 奏さんに支えられながら彼の車に乗せられ、車が動き出した時もずっと俺の身体は震えていた。  蒼也に言われたことがぐるぐると頭の中を回っている。  あいつは俺を守っているつもりだった?  無いだろう、そんなの。俺があいつにされてきたのはただの性欲処理だ。  守るだなんて……  母さんに怒られて、そこに蒼也が現れたことは何度かあったっけ……?  それで……蒼也が母さんに触れると母さんは……  子供の頃を思い出すと胃がきりきりと痛みだす。  俺は蒼也を傷つけたくなくて……近づくなって言ったら蒼也に何か言われた気がする。 『大丈夫だよ、だって僕と緋彩は双子だよ? 僕には緋彩の力、通じないから』  そうだ、思い出した。蒼也は俺にそんなことを言ってた。でもそんなことあるわけない。  実際俺は蒼也に触って……蒼也を傷つけたことが…… 「あ……」  カタカタと歯が音を立てて、胃の中身が逆流しそうになる。 「緋彩?」  心配そうな奏さんの声が遠くに聞こえてくるけど、俺は何も答えることができなかった。  蒼也が母さんの心を操っていたのは確かだろう。  俺を抱いてきたのは、俺を守るためとか信じられるかよ……  マーキング……? あぁそうか。あいつに抱かれるようになってから母さんは俺にそこまで近づかなくなったような……?  俺にはアルファやオメガの匂いがわからない。だけど父さんや母さんはわかるんだよな……  父さんも匂いでわかったって言っていたし。  でも、あんな行為は間違ってるだろ。それで俺がどれだけ苦しんで来たか。  これで俺は、蒼也から解放されるのか……?  蒼也に言いたいことは言えたと思うし、なんであいつが俺を抱いてきたのか、あいつの俺に向けられた感情の理由はとりあえず判明したと思う。  でもだからって、家に帰る気にはなれなかった。  ひとりになるのは怖い。  ひとりになったら俺はばらばらになってしまいそうで。  車が止まり、奏さんの住むマンションの駐車場に着いたのに気が付く。 「緋彩?」  名前を呼ばれて俺は、奏さんの方を向き、その腕を掴んで言った。 「もう少し、ここにいさせてください」 「……僕は構わないけど」 「一緒じゃないと俺、どうかなりそうで……」  喋っていると視界が歪み、声も震えてくる。 「家に取りに行くものはある?」  そう問われて俺は、首を横に振る。  たぶんない。いや、あるかもしれないけどそんなの考えられなかった。  今はとにかくここから離れたくない。  ひとりになりたくないし、蒼也が知っている場所に行きたくもない。  震える俺の身体を奏さんがそっと抱きしめてくる。 「大丈夫だよ、緋彩。僕がそばにいるから」  部屋に入るなり俺は、奏さんにしがみ付き自分から口づけた。  すぐに奏さんは俺の身体を抱きしめ、唇の隙間から舌を差し込んできてぴちゃぴちゃと舌が絡まり合う音が響く。 「ン……奏さぁん……」  唇を離してうっとりと奏さんを見つめると、彼は切なげに目を細めた。 「そんな顔されたら今ここで押し倒したくなる」 「奏さん……」  名前を呼ぶと、奏さんは俺が着ているTシャツを捲り上げ、直に胸に触れた。  ぷっくりと膨れ上がった乳首を指先で捏ねられるとこれが漏れ出てしまう。  ここは玄関だ。  ドア一枚向こうはいつ誰が通るかわからない通路なのに……俺は右手で口を押えて、声が出ないようにした。 「恥ずかしいの? 自分からしてきたのに」  確かに俺は自分から奏さんに抱き着いたし、自分からキスしたけどそれ以上のことは考えてなかった。  奏さんは俺の胸を弄びながら、耳元に唇を寄せて囁く。 「緋彩は僕の物だよ、誰にも渡さないし、どこにも行かせはしないから」 「あ……」  耳を舐められた後、首に口づけが落とされてそこからじわり、と熱が広がっていく。  このままここでヤるのか……?  さすがに最後まではしないと思うけど、奏さんの行為は止まらなかった。  彼の手は胸から腹に下りていき股間に触れる。  俺のペニスはすでに膨らんでいて、ジーパンがきつくなっている。  奏さんは俺のジーパンのファスナーとボタンを外し、下着の隙間からペニスに触れた。 「ほら、もう先走りが溢れてる。早く緋彩の中に挿れたい」 「う、あ……」  やわやわとペニスを扱かれて俺は奏さんにしがみ付き喘ぎ声をあげた。  このままじゃあここでイってしまう。  それは嫌なのに、奏さんは徐々に手の動きを早めていく。 「んン……あ……奏さん……それ以上、だめぇ……」 「何がだめなの」  言いながら彼は、俺の首をぺろぺろと舐めた。 「だって、イっちゃう、からぁ……」 「ここでイくのは嫌なの?」 「だめ……だって、俺……奏さんに挿れてほしい、からぁ……」  イくなら手より奏さんのモノがいい。  すると奏さんの手が止まり、下着から手を抜いていく。 「あ……」 「緋彩、今日僕は、君に優しくできないかも」  そう囁き俺を見つめた奏さんの目は、野生の肉食獣のようなぎらついた目をしていた。 

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