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俺を見つめるお前が悪い! (3)

 決死のアレやコレをやり終えてお風呂を出ると、佐藤くんがいなかった。  リビングを通り過ぎて寝室を覗きこむと、佐藤くんの後ろ姿があっちやこっちやに行ったり来たりしている。  よく見ると、ベッドメーキングしているようだった。  でも、なんで?  シーツは、昨夜変えたばかりなのに。 「佐藤くん……?」 「あ、理人さん! うわ、なんで裸!?」 「え!? だ、だって、佐藤くんがっ……」 「ああでも、ちょうどいいや。裸の方が気持ちいいだろうし」 「へ……?」 「じゃじゃーん!」  佐藤くんが、効果音とともに両手を広げてみせた。  綺麗にメーキングされた俺たちのベッドが露わになる――と。 「なんだ、これ」  佐藤くんが取り替えたシーツは、水色に変わっただけじゃなくて、素材も新しくなっていた。  なんだか……ツルツル? 「最近、蒸し暑くて寝苦しくなってきたでしょ。だから、ゲットしてみました!」 「え……」 「冷感シーツ!」  冷感?  なるほど……確かに、触ってみると、ツルツルなだけじゃなくて、ひんやりしている。  これなら、暑い日でも快適に寝られそうだ――けど。 「もしかして、佐藤くんの言ってた〝やっておきたいこと〟って、これ……?」 「はい!」 「じゃ、じゃあなんで『身体の隅々まで洗ってこい』なんて言ったんだよ!?」 「え? せっかく新しいシーツにするから、綺麗な身体で冷感を味わってほしかっただけ……ですけど……」  佐藤くんの語尾が消滅し、視線がゆっくりと俺の上を這い回った。  見られたところが、軌跡を描くように熱くなっていく。  ソコも。  アソコも。  あーんなトコロまで。  佐藤くんは、目で味わうように俺の身体を堪能する。  うっかりアレが元気にならないよう精神統一しながら、俺は全力で知らんぷりした。  でもきっと、佐藤くんにはとっくに全部バレているんだ。  俺が裸でいる理由も、佐藤くんの顔を直視できない理由も。  後ろの異物感が消えてくれなくて、もじもじするのを止められないことも。  だって、まだ残ってる。  指を突っ込んだ感覚も、その突っ込んだ指で一生懸命ほぐした感覚も。  全部、ソコに、しっかりと。 「もしかして、理人さん――」 「あ、あー! やった! やったあ!」  俺は、助走をつけて勢いよくベッドにダイブした。  ボヨンッと跳びはねた視界の真ん中で、佐藤くんの眉間に皺が寄る。 「理人さ――」 「ほんとだ! ものすごく冷たい!」 「理人さん! 話を――」 「すごい! 気持ちいい!」  佐藤くんの言葉を、渾身のゴロゴロで遮る。  ゴロゴロ。  ゴロゴロ。  右へ左へと転がりながら、シーツの冷感を楽しむ。  ふははははは。  この機敏なゴロゴロには、さすがの佐藤くんも追いつけまい。  ふはははは――… 「ぐへッ!」  突然肺を押しつぶされ、変な声が出た。  ちょうどうつ伏せになっていた瞬間を狙って、佐藤くんがベッドにダイブしてきたらしい。  いや、ベッドにじゃない。  俺の上に。 「さ、佐藤くん! 重っ……」 「あれ?」  俺の喉が、ヒュッと鳴った。 「なんでだろう」 「……っ」 「柔らかい」  佐藤くんの指先が、俺の窄まりをまさぐった。  とろとろに解れた襞を数えるように揉みほぐしたと思ったら、ちゅぷんっと中に侵入してくる。 「ん……っ」 「なかなか出てこないなあって思ってたんですよ」 「やめっ……」 「一人でなにしてたの?」 「なに、って……」  その顔は絶対分かってるだろ、このやろう! 「さ、佐藤くんが俺のお、お尻ばっかり見つめるから! てっきり、そういうことだと思って――」  がぶり、と噛みつかれた。  無理やり捻られた首が痛い。 「ん……ん、ん……っ」  性急な口づけが突然止んだと思ったら、 「あ……!」  後ろからぎゅむっと握り込まれて、腰が浮いた。  勃ちあがり始めたそれを優しく愛撫しながら、佐藤くんが笑う。  なんでだろう。  大好きな笑顔なはずなのに、  怖い。 「理人さん」 「な、なんだよ」 「最高の据え膳をありがとうございます」 「なっ……!?」 「このままペロッと食べちゃいたいのは山々なんですけど、ぜひ理人さんに使わせていただきたいものがあって」  や、やっぱり――!  ていうか、 「理人さん『に』ってなんだ! 『に』って!」

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