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夏祭り編 第4話
「捺くん、もっとちゃんと舐めないと」
「……う、うん」
え、あれ?
優斗さんを伺いながら目一杯舌出して、アイスキャンディーを下から上にゆっくりと舐め上げる。
「イイ子だね、上手」
空いてる片手で優斗さんが俺の頭を撫でてきた。
勝手に顔が熱くなる。
別に照れる柄でもないんだけど、なんか恥ずかしい。
だってコレって。
「……あの、優斗さん」
「なに」
「あの……」
「もう舐めてくれないの? ちゃんと咥えなきゃ、ほら先から垂れてる」
「……」
慌てて言われるままにアイスを咥えた。
で、しゃぶって、舐める。
アイス食ってるだけ、だ。
俺たちの周りにはすぐ近くにいる男二人組以外にもちょっと離れたところにもたくさんいるし。
少し先を見れば人混みが見える。
ふたりっきりじゃないし、アイス食ってるだけ、なんだけど妙にドキドキするっつーか。
「俺も食べたくなってきたな」
不意に優斗さんが顔を近づけてきた。
人目もあるのに、ってなんか一瞬頭の中がパニクる。
もちろん少し離れて優斗さんの動きは止まって、俺の咥えてたアイスが離れていって、そして優斗さんが舐める。
俺と目を合わせたまま、ゆっくり。
「……」
「美味しいけど、捺くんはもっと大きい方がよかった?」
「……へ?」
くすくす笑う優斗さんに心臓がやばいくらい跳ねる。
これって、やっぱ、あれで。
「捺くん」
ここにいるのは俺たちだけじゃないのに、俺たちだけしかいないように感じてしまう。
人混みの喧騒が遠くに聞こえながら優斗さんの指が俺の唇を拭った。
「静かなところ、行こうか」
優斗さんがぱくり、とアイスを咥え立ち上がって俺に手を差し出した。
俺はバカみたいに首を縦に振りながら手をとって立ち上がって。
頭の中では必死こいてこの辺で静かで人気のなさそうな場所を考えまくっていた。
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