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はじめてのF ②
「……え……気持ちよくない?」
「気持ちいいよ」
「なら」
「でも俺も捺くんを気持ちよくしたいし」
捺くんは半身を握りしめたまま俺と半身とを見比べる。
「……俺も優斗さん気持ちよくしてあげたいんだけど」
「もう充分だよ」
「で、でも……俺……も―――……優斗さんの飲んであげたいし」
ぼそぼそと捺くんは呟いて顔を赤くしながらまた俺のを咥える。
「……」
懸命に奉仕を再開する捺くんに対して、思考が停止している俺。
飲んで―――って……。
じわじわと脳内に浸透してくる捺くんの言葉に理解するより先に身体が反応してしまう。
一気に込み上げてくる吐精感を見透かすように捺くんは咥内奥深くまで苦しいだろうに咥え込んできた。
「っ……、捺くん」
ぎゅ、と髪に触れていた手に力がこもってしまう。
堪えようと思えば堪えられる。
だけど―――捺くんが望むなら……なんていうのは言い訳で、結局は単純に男の欲なんだろう。
「―――く……っ、捺くん……出るよ……っ」
俺はしばらくして捺くんの咥内に白濁を吐き出した。
俺は慌てて半身を咥内から引き抜く。
一瞬捺くんは少し驚いたように目を見開いていたけど口元に手を当て俺を見た。
その咥内に俺が吐き出したものが溜まってるのは一目瞭然だ。
俺は急いでティッシュを取って、
「捺くん、出し――……て」
と、差し出したけど同時に、ごくん、と捺くんの喉が鳴った。
「……」
軽く咳き込んで呆然とする俺に笑って捺くんは舌を見せてくる。
「ちゃんと全部飲めたよ!」
無邪気な様子の捺くんに対して俺は青ざめる。
「捺くん、飲まなくていいんだよ。もしお腹壊したら」
「え……でも優斗さんも俺の飲んでくれたし……」
ダメだった……ですか、と段々声がしぼんでいく。
戸惑うように俺を見つめる捺くんに俺は思わず手を伸ばして頬に触れた。
「ダメじゃないよ。びっくりしたけど、嬉しい」
驚きが大きいけれど、俺のを飲み込んだっていう事実は俺の半身が萎える暇を与えず硬くさせつづける。
笑いかけると捺くんは安心したように頬を緩めた。
「でも本当に無理しなくていいからね。その……フェラ……とか初めて……」
嬉しいのと同時に申し訳なさもわいて言葉を濁すと、捺くんは屈託なく笑みを深くした。
「平気だよ、初めてじゃないから」
「……え?」
「前、松原の――……あ」
言いかけて、ハッとしたように口を閉ざす捺くん。
俺もようやくそう言えばと思い出した。
そもそも俺と捺くんのこの関係がはじまったきっかけは……松原さんだ。
最後まではシてなかったけど多少……肌は触れ合わせ……フェラしてたんだ。
すっかり忘れてしまっていた分、ショックが大きい。
それはだけど俺が浮かれていたからで捺くんのせいでもなんでもないんだけれど。
捺くんも気まずそうにしていて俺の様子をうかがっている。
ベッドの上で向き合って二人なにしてるんだろう。
「……な」
捺くん、と空気をかえようと呼びかけかけたらそのまえに捺くんが距離を詰め俺に掠めるようにキスをしてきた。
目をしばたたかせて捺くんを見つめるの捺くんは上目遣いで喋り出す。
「あの、多分……っていうか男のモン咥えるとかねぇし……。優斗さんのしか咥えることないと思うよ。精液飲むとか本当なら考えられないし、でも優斗さんならいつもしてもらってるし、別に飲んでもいいかなって思ったけど他のやつのとかやっぱない。……って、なに言ってんだ俺。あの、だから、ですね……」
そして最後照れくさそうに目を泳がせた。
「だから、その」
「捺くん」
「っわ」
ベッドに押し倒し脚を割開いた。
「ごめん、俺もう限界みたい」
「へ……」
手早くゴムをつけてぐっと腰を押し付けると捺くんはすぐに理解したようで、一瞬で表情を欲で染める。
「うん、俺ももう挿れてほしい……かも」
まだ十分にほぐしていないけれど俺を招き入れるように僅かに揺れた腰を掴んで俺は半身をしずめていった。
「……捺くん」
「ン……は、い」
苦しさと快感とに眉を寄せて荒い息を吐きだす捺くんに、俺も触れるだけのキスを落とし、
「――たくさん突いていい?」
告げたい言葉のかわりに、そんな言葉を投げかける。
捺くんは艶っぽい笑みを浮かべて頷き、俺は捺くんに溺れていったのだった。
―――俺が捺くんにとって最後のひとだといいのに、な。
なんていう甘ったるい感情を抱きながら。
【おわり】
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