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第42話

 ゴゴゴゴゴォオオー!!  地響きがうめきを上げる。  雷鳴に似た振動が大気を揺るがす。  王様の魔法でも、オルフェの魔法でもない。  否、そもそもこれは魔法によるものなのか。 (ここにいてはいけない)  本能が警鐘を鳴らした。  逃げなければ。  二人を連れて。  でも、どこへ?  グォンッ  荒れ狂う暴風が館を壊そうとしている。 「妙ですね。この館は私の結界で護られています。褒めたくはありませんが、結界を破壊できるのは現状、竜騎士カイザークくらいのもの。つまり、この状況は……」  すぅっと眉が吊り上がった。 「この音は結界を壊そうとしているのではありません。結界ごと館を……」  ガゴンッ  軋む不協和音が影を揺らした。  天井のシャンデリアがガラガラと崩れて、床の観葉植物達が次々に倒れていく。  けたたましい震動共に本棚が倒れて、床に本が散らばった。  立ってられない。  膝をついた俺を庇おうとした声が聞こえる。 「勇者様、こちらへ。ベッドの影で身を伏せて下さい」  声に従って、ベッドの傍で身を屈めた。 「少しお待ち下さい。部屋を片付けましたら、美味しいハーブティーをお淹れ致しますね」  明らかに、これから何が起きるかも予測できない事態が起こっているというのに、いつもと変わらないオルフェの穏やかな笑顔に、胸がほっと暖かくなる。  この声、落ち着くんだ。 「うん、楽しみにしている」 「はい。お任せを」  柔和に佇む彼の眼光が光を帯びた。  膝を上げた体が、ふわりと床を離れた。浮遊の魔法だ。  強震する床。  地響きが大気を穿つ。 「騒々しい」  秀麗な口許が不機嫌に歪んだ。 「勇者様の住まう館と知っての狼藉か。魔王軍全軍と敵対すると心得よ」  露わになった怒りが声に乗る。 「勇者様様に仇なす者は、魔軍宰相・オルフェーヴルが排除する」

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