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第44話

 グラリと視界が揺れた。  体に力が入らない。  急速に体力を奪われていく。 「后」  俺の異変を感じて、足場の悪い床を必死に王様が走る。  しかし。 「王様!」  嘘だ。  王様が消えた。  目の前で、忽然と。 「王様!」  部屋に響くのは俺の声だけ。呼ぶけれど、もう声は返らない。 「どうして?」  王様が消えた。  ゴゴゴゴゴォォオオオー!!  地響きがうめきを上げる。 「王様ッ」  どこにいるのかも分からない。  でも、探さないと。  重い体を持ち上げて、よろめきながら窓まで走る。  王様は幻影を作って館に来た。  けれど今の俺には、魔力の痕跡を追う術がない。  自らの意志で部屋を出ていったとは到底考え難いけれど。  何でもいい。手掛かりがほしい。  何か掴めれば。  窓の格子に手を掛けた、その時。  背後から伸びた腕に、俺の手は掴まれた。 「なりません」 「でも、王様がッ」  オルフェ! 「どうか、手をお離し下さい」  静かに淡く、菫色の魔力を帯びた瞳が懇願するかのように見つめる。   「人の身で外へ出るのは危険です」  この館に何が起こっているんだ?  ゴゴゴゴゴオォォオオー!!  大地のうめく鳴動が響く。 (そうだ)  なぜ?  夜はとっくに明けて、窓からは眩しい朝日が差し込んでいた筈。  なのに、なぜ?  ここは真っ暗なんだ?

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