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第53話

「フフフ、キスされると思いましたか?」  瞼の奥、紫色の淡い瞳の光が差し込んだ。 「まん丸に目を見開いて……お可愛らしい」 「どうして、こんな事をするの?」  口を開いたのは、ほとんど反射的だった。 「まだそんな口がきけますか。……いえ、さすがは勇者様といったところですね」  口許が微かに弧を描いた。 「言った筈ですよ。あなたが弱いからだと」  無残に吐き出された言葉は、躊躇なく胸をえぐる。 「元来魔族とは、力弱き者が強き者に従属する生物。この理に従い、勇者様、あなたを征服致します」 「俺は魔族じゃない!」 「しかし我々魔族との和平をお望みなのでしょう。でしたら我々のルールも知って頂くのが道理かと」  瞳を背ける。  こんなのオルフェの言う言葉じゃない。  オルフェの本心だと信じたくない。 「我々も人の文化に理解を示しております。ですので、勇者様も我々のルールに歩み寄って頂ければと存じます」 「違う!」 「違いませんよ」  身をよじって抵抗するが、のしかかる体はビクともしない。 「ほら、ここ……硬くなってきていますよ」 「これは……」 「性交の準備をして下さっているのですね。ありがとうございます」  首をふる。  しかし意に反して、足の付け根のモノが熱くなっている。 「せっかくのところ申し訳ありませんが、勇者様のお使いになるところは、こちらですよ」  つぅぅ……っと。  指先が繊細な後ろの窄まりを撫でた。 「ハゥっ」  ビクンッ  体が跳ねる。 「触れただけで歓んで……可愛いですね。それとも素質があるのでしょうか」  毒色の甘美な囁きが鼓膜を刺激する。 「フフ、今度はビクンッと肉棒が跳ねましたね。私に触って欲しいとおねだりしているのでしょうか」  首を振る。そんなんじゃない。体が勝手に。

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