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第22話
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どれくらい時がたったのか、あるいはそんなに経ってないのか、林田の匂いに安心しきっていたが、唐突に内村からの命令を思い出してしまった。
そうだ、林田を返してって言ってた。内村に林田を返さなきゃーーー・・・・・・でも返すってどうやって?
だって、林田は一年前に突然来たんだ。
どこから来たのか元々どこにいて何をしていたのかなんて俺は知らないし。
返せない俺は悪い子ーーー・・・・・・?
命令が聞けない俺は悪い子ーーー・・・・・・?
返し方なんてわからない。
それならーーー・・・・・・。
「紫音様ッ!?どうなさいましたか?」
林田の声がすぐ近くで聞こえた。
「・・・・・・林田を返してって言われた。けど返し方なんてわからないから・・・・・・俺がいなくなればいいんだって・・・・・・。」
ぎゅっと抱きしめられる。
そのまま背中をとんとんと優しく撫でられる。
「・・・・・・紫音、《 calm down 》」
耳元で優しくて安心できる声での命令。
「紫音様。失礼致します。」
林田が何を謝罪したのかわからないけれど、フワッと宙に浮かび、抱きかかえられてることに気づく。
恥ずかしくて下ろしてほしいのに身体が言うことをきかない。
「圭吾。お前がやったことは一歩遅ければ罪だからな。俺はお前を許す気はないから、覚えといて。」
いつもと違う林田の声が聞こえた気がしたけど俺はそのまま意識を手放した。
フワフワと揺れる中、心地良い声が聴こえる。
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