11 / 17

番外編「おとまり」5

  「あ、なんか、オレ、今変なこと、言った?」 「……言った」  ククッと笑い出して、魁星がオレをまっすぐ見下ろす。 「オレがお前のこと、男だって知らないと思ってんの? どういうことだよ?」  めちゃくちゃ面白そうにのぞき込まれて。  ドキドキしつつも、ほんとに変なこと言ったな、オレ、と固まる。 「……ああ、そーいうことか」  少しして、魁星がニヤッと笑ってオレを見つめる。 「……男の体だ、とか、言いたいのか?」 「――――……」 「誰も居ないから、早く来いよってオレが言ったから、想像しちゃった?」 「――――……」  何で分かるんだ。  魁星、すごすぎる。  うん、と頷くと。 「んー。つか……朔が男って、知ってるに決まってるし」 「――――……魁星は……男が、好き?」 「なんつー聞き方……」  クスクス笑いながら、魁星は、オレの頬をぶに、とつまんだ。 「ちゃんと聞いてろよ」 「……うん」 「朔以外の男を可愛いと思ったことがないから、多分男は好きじゃない。で、朔以外の女も、好きだと思ったことがないから、女も別に……てことは、さ」 「――――……」 「オレは、朔が好きなんだよ」  分かる?とにっこり笑う魁星を見上げて。  ……何だか感動してしまう。 「……魁星……」  じーん。  オレ、泣いちゃうかも……。  あ、でも……。 「……でも、魁星がさ」 「ん」 「オレに触って、男……って分かったら……」  そこまで言ったら、魁星がまた笑い出す。 「だから、男って分かってるから。……朔」  ぎゅう、と抱き寄せられて、よしよしと、頭を撫でられる。 「朔のそういう、よくわかんねえとこも、全部、可愛い」  クスクス笑いながら、すっぽり、魁星の腕の中に納まる。 「――――……男って知ってるに決まってる。それでも、ずっと好きだったから」 「――――……」 「お前も、同じじゃねえの?」 「……多分……同じ」  また魁星が、笑う。 「何、多分って?」 「……魁星とオレの気持ちが、全部同じかは分かんないから……でも、ずっと、好きだったのは……同じ……」 「――――……ん。おっけ」  クスクス笑った魁星に、よしよし、と撫でられる。 「とりあえずオレんち行こうぜ。とりあえず部屋着持って、スマホ持って……そんなもんか?」 「うん」 「あとは、明日出かける前にまた寄ればいいよな」 「うん」  魁星がオレの引き出し開けて、部屋着とかほいほいと出して、バッグに詰めてく。 「どこに何が入ってるかとか、全部知ってるもんね……」 「朔だって、オレの部屋知ってるだろ」 「うん。知ってる」 「――――……ずっと一緒に生きてきたじゃん。オレら」 「うん……」 「これからも、ずっとだけど。平気?」  魁星が、クスクス笑いながら、オレを見つめる。 「平気っていうか。――――……嬉しい」  魁星を見上げると、魁星は、その瞳を緩めてオレを見つめて。  ちゅ、と頬にキスしてくれた。

ともだちにシェアしよう!