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番外編「おとまり」6
「お邪魔しまーす」
魁星にくっついて、家に一緒に入って、靴を脱ぐ。
「今皆出てるから、居ないよ」
「いつ帰ってくるの?」
「夕方。五時過ぎ位って言ってた」
通りかかったリビングの時計を見て、あと一時間位はあるんだな。
……どきどきどき。
一時間も、魁星と、二人きり。
めちゃくちゃドキドキする。
すると、魁星はリビングの奥のキッチンに向かった。
「おやつ、何食べたい?」
「んー……何がある?」
「一通り色々あるけど。スナックとか、チョコとか。アイスもあるし」
「じゃ、アイスが食べたいな」
「ん。どれがいい? 選びな」
「うん」
一緒に冷凍庫の前にしゃがんで、アイスを覗き込む。
「バニラがいいな」
「ん。オレもこれ。スプーンも持って? オレ麦茶入れる」
「うん」
言われるまま、引き出しからスプーンをふたつ。
アイスと一緒に持って待っていると、魁星が麦茶を入れたコップを持つ。
「部屋で食べる?」
「うん」
魁星の部屋に入ると、クーラーをつけて、窓を閉めた。
「待ってたのに全然来ないし、スマホも出ないし。絶対寝てると思ったんだよな」
クスクス笑いながら、魁星がローテーブルに座った。オレも、その向かい側に座ろうとしたら。
「朔、こっち」
腕を引かれて、隣に座らされる。
「――――……」
あんまりに近い事を認識した瞬間、かあっと顔が赤くなる。
それを見た魁星が、またちょっと驚いた顔をしてから、クスクス笑う。
「お前って……今まで、オレの横、どうやって居たの?」
「……?」
「赤くなったりしたことなかったじゃん」
「……」
「どうやって我慢してたの?」
クスクス笑いながら、そんな答えにくい質問をしながら、魁星はアイスの蓋を開けた。
「ほら。食べな」
開けたそっちをオレに渡して、もう一個、自分のも開けてる。
「ありがと……」
言いながら、一口、ぱく。
――――……顔が赤くなってると、口の中まで熱くなんのかな。
アイスが冷たくて、気持ち良い。
「オレら、今までもずっと隣に居たよな?」
「うん、居たけど」
「まあ今のこの状態で、二人なのに隣には座らなかったとは思うけど」
魁星が面白そうにオレを見る。
「この位の距離感、今までもあったと思うんだけど」
「……友達が居て、魁星が隣に居たことは、あったけどさ」
「うん」
「ふたりきり、だし……でも一番違うのは……」
「ん?」
「――――……魁星が、違う」
オレが、一生懸命出した言葉に、魁星は、ぷ、と笑った。
「何、オレが違うって」
「だって……魁星が、オレのこと、好きとか、言って」
「うん」
「それで近くに居てくれてる、って……思うから」
「――――……」
「だからさ、同じ感じで、側に居ても、全然違くて……」
「……そんで、ドキドキして真っ赤になっちゃうのか?」
「そう」
「ふーん……」
ふーん、て……。
魁星の方を見ると。
すぐ近くの魁星は、なんだかすごく優しく笑ってて。
また、ドキッとしてしまう。
「――――……」
何も言えなくなってると。
魁星は、オレの頭に触れて、よしよし、と撫でた。
「朔」
「……」
「マジで、可愛い」
むぎゅー、と抱き締められる。
「――――……っ」
ドキドキで、死ぬかも……。
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