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番外編「おとまり」7
しばらくオレをぎゅーってしてた魁星は、ふ、と顔を上げて、オレから少しだけ離れた。
「あー……アイス溶けちゃうか。朔、先食べよっか」
魁星がそう言って、オレを腕の中から解放する。
「う、ん」
言いながら離れて、ドキドキしっぱなしのまま、アイスを食べる。
正直なとこ、冷たいのは分かるけど、緊張しすぎて、味がよく分からないのだけど。
アイスの味が分からなくなる日が来るなんて、今の今迄思ったことなかった。
何となく二人で黙ったままアイスを食べ終わった。
手持ち無沙汰に、オレがアイスの蓋をしめて、むぎゅむぎゅ、と押していると。
「なあ、朔」
「……うん?」
呼ばれるだけで、ドキドキする。
オレ、今までだって、魁星のこの部屋、何回も何回も、数えきれないくらい、来てるのに。
……よく平気で、いられたなあ、と思う。
まあ。友達として、ひたすら頑張ってたんだけど。
「……朔が緊張すると、オレも結構緊張する」
「え。そうなの?」
かなりびっくりで、魁星を見上げてしまうと。
「オレ、多分、お前みたいに、真っ赤にはならないけど」
「――――……」
「顔に出ないだけだと思う」
そんな風に言って、魁星はクスッと笑って、オレの頭をよしよし撫でてくれる。
「朔が、そんなに真っ赤になるとか、知らなかった」
「――――……オレも、知らなかった」
「……そうなのか?」
今度は魁星にじっと見つめられる。
「だって、オレ……魁星とこうなってから、だもん、こんな赤くなってんの。今まで何かあっても……別に緊張してても、こんな風になったことなかったし」
「――――……確かにそうだな。見たことないもんな」
「うん……」
「オレ、こんなに赤くなる奴、あんま見たことないかも」
ぷ、と魁星は笑って、オレの頬に触れた。
う、わー。
ドキドキドキドキ。
ずっとずっとずっとずっと、死ぬほど大好きだった、顔が。
ゆっくり近づいてきて。
唇が、触れあった。
「――――……っ」
なんか、なんか、もう、もったいなくて。
……もったいないって言うのも変かもしれないけど。
目が、つむれない。
「……朔」
「――――……っ」
魁星も、瞳を閉じてない。
見つめ合ったままキスして――――……ゆっくり、唇が離れた。
「朔……また真っ赤」
すりすりと頬を撫でられて、そのまま「あっつ」と笑われて。
ぎゅー、と抱き締められた。
「あーもう、朔……」
「――――……」
きゅ、と魁星の背中に捕まる。
「――――……」
押し付けられた魁星の胸が。
めちゃくちゃドキドキしてるのが、分かる。
あ。
と思った瞬間、余計にドキドキする。
……魁星も、オレとこうしてて。
こんなにドキドキ、してくれるんだ、と思ったら。
………嬉しすぎる。
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