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番外編「おとまり」11

 焼肉を食べ終わって、皆でテレビを見たりまったりした後、寝る準備を済ませて、おばさんと成哉におやすみを伝えた。  そしたら、おばさんに魁星がちょっと呼ばれてて。  少ししてから。 「はー……もうマジで最低。じゃーな、おやすみ」  あれ、ちょっと荒っぽいせりふ。  珍しい。  オレも魁星も、なんか、あんな感じの母親たちだからか、割と、親子仲は良い。思春期真っ盛りの時でも、家族ぐるみでどっか遊びに行ったりもしてたし、おばさんのことも、ちょっと家族みたいな感じだし。  母親と口きかないとか、全然そういうのも無いまま来てる。  豪快な人達だからなあ……母さん達が仲がいいの、すごくよく分かる。  オレと魁星が仲良くなったのが先なのか、母さんたちが仲良くなったのが先なのか。ちょっとよく分からないが、割と、父さん同士も仲が良かったりして。  …………これから、オレと魁星がそうなったら……。  ………………まあまだ、結婚とかは、日本では難しいと思うけど。  いつか、皆で家族になったりするのかなあ……とか、変な夢を見ながら、魁星の後ろについて、階段を上る。  二階について、部屋に向かいながら魁星を見上げる。 「最後、おばさん、何て言ったの??」 「――――……」  部屋の電気をつけて、オレが中に入ると、魁星は、鍵をかけた。 「……ドン引きすると思うけど。聞きたい?」 「――――……ええ……ちょっとやだなぁ……」  言いながら、魁星のベッドの横に敷かれている布団の真ん中に、座る。 「……でも気になるから、聞こうかなぁ」 「――――……引くなよ?」 「ええー……」  かなり嫌かなあ……。  思ってるオレの隣に、魁星が座る。  肩を抱かれて、引き寄せられて。めちゃくちゃ間近で、オレを見つめながら。 「……まだ朔には早いからね。せかすなよー……だって」  ……ん?  オレには早い??  せかすなって?? 何それ? 「どういう意味? 何の話……?」  聞くと、魁星は、ふ、と目を細めて、更に近づいて、オレにキスした。 「――――……」  うわー……。  ――――……何回目、だろう。  魁星と、キス、するの。  ドキドキが……。  やばすぎる…………。 「……ん……?…………ふ…………っ?」  魁星の舌先が、オレの舌に触れて。  戸惑ってる隙に、優しく絡んだ。   「……………………っっっ!」  し、死ぬ…………!!!  心臓がバクバクしすぎて、ちょっと死を覚悟した時。  魁星が、そっと、離れた。 「――――……真っ赤すぎ……」  魁星の手が、オレの両頬を挟んで、冷たい手で冷やしてくれる。 「……こういうの。急ぐなって意味だと思う。わかった?」 「――――……っっ……う、ん……」 「大丈夫? 朔」  クスクス笑って、すりすり触れてる魁星に、はっと思い出した。 「……あ……そういえば…………母さんも、節度をまもれって、おばさんもいるんだしって、魁星に言っとけって、言ってた……」  言うと、魁星はめちゃくちゃ苦笑い。 「何、オレ、信用なさすぎじゃない?」 「――――……」  二人で顔を見合わせて、ふふ、と笑ってしまう。 「まあ、その内な?」 「……うん」  よしよしと、良い子良い子されながら、ふふ、と笑ってたら、さっきの言葉を思い出した。 「ねー、魁星」 「ん?」 「攻めと受けってどういう意味?」 「……あ、わかんないで、さっき話してたの?」 「……うーん、なんとなく、攻める方と受ける方って意味で、分かってるつもりだった」 「――――……」 「……ちゅーする方と、される方とか? でも、それだと、オレが魁星にちゅーしたら、オレが攻めになるのかなーって?」 「――――……」  魁星は、オレを見て、ぷ、と笑って。 「……抱く方、抱かれる方だから。まあ、普通は、固定じゃねえの」 「――――……だ……」  …………そっちか。  ――――……ボボボボボ。  せっかくひいてきた顔の熱がまた集まる。 「え、さっき、成哉ってば、分からないでそんな攻めとか口にしちゃってたのかー」 「なー? ふざけんなって感じだよなー、酔っ払い……」  ……とんでもないな、母さんたち……。 「……じゃあオレは受け??」 「――――……でいいの?」  クス、と笑いながら魁星がオレを見つめる。 「えっ。いいのって……」  いいのって。……え、逆の可能性もあるの??  え、オレ、が魁星を……??? 「……えっ、あの――――……オレ、攻め、無理……」 「――――……嫌なの?」 「えっ。え。あの。嫌っていうか……えっ、魁星、受けが、いいの??」  まさかの……??!!  必死の思いで見つめていると、魁星が、ぷーっと、吹き出した。 「……あー、もー、可愛い……」  ぎゅーと抱きしめられる。 「――――……オレが朔にしたいから。それでいい?」 「…………っうん」 「ありがと」  ありがとって。  ……ありがとって、なんか、うれしい。 「それで良いっていうか…… それが、良い。オレは、してほしいから」 「……うん」  額に、魁星の顎が触れてて。  なんだかすりすりされながら、抱きしめられる。 「――――……いつしよっかー、朔」 「えっ、いつ……」 「楽しみだなぁ?」 「……う、うんっ」  ドキドキドキドキ。  舌、触ったキスで、心臓やばかったけど。  ほんとに死んじゃうってないかな、ドキドキ破裂して……。 「……こっちで寝ていい?」 「え。あ、布団で?」 「一緒に、寝よ?」 「――――……うん」  魁星を見つめて笑顔になってしまうと。  魁星も笑って、オレの頬にキスをした。 「今日はなんもしないから」 「……うん」  ……キスくらいは、いいけどなぁ……。  なんて思いながら、魁星とくっついたまま、ころんと、布団に転がる。    魁星の隣で、向かい合って、手を繋ぎながら。  いろんな話をして。  合間に、顔や唇に、軽くキスされる。 「キスくらいはいいよなー?」  そんな風に笑う魁星に、嬉しくて、頷く。  今まで何度も泊まりっこはしていたけれど、  両想いになって、初めてのおとまりの夜は。  めちゃくちゃ、幸せな時間だった。 (2022/9/19) 「お泊り編」-Fin- またいつか~♡

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