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番外編「おとまり」10

 魁星と、おばさんと成哉とオレと四人で食べ始めた。  おじさんは今日は飲み会らしい。 「……朔、自分の前に肉確保すんな」 「えっ。だって、これ、オレが食べたいしー」 「わかるー、朔ちゃん、このお肉はオレのね。そっち朔ちゃんのでいいよ」  成哉が笑いながら言う。 「ほら、成哉もこう言ってるし」 「幼稚園児と同じこと言うな」  魁星はクスクス笑って、オレを見る。 「そうだけどー」 「ほら、こっち焼けた」  ぽいぽいと、魁星が肉をたれの中に入れてくれる。 「わーありがと」 「ずるいぞ、兄ちゃん、朔ちゃんばっかり!」 「朔ばっかりじゃないだろ、成哉も食え」  おばさんは特に何も言わず、ちょっと笑いながら、缶ビール中。  大分いい感じに赤くなってるなぁ、と思いつつ。  魁星と成哉とオレで、肉をたらふく食べていると。  おばさんのスマホが鳴り出した。 「あ。朔のママだよ。もしもしー? 直美ー? んー、今焼肉中だよ」  なんとなく電話してるので、オレ達三人、あまりしゃべらず、ただ肉を食べてると。  なんだかおばさんが、あははは、と笑い出して、オレと魁星を眺める。  ――――……?? 「ねえ、朔のママがさぁ、聞いてるんだけど」 「?」 「多分酔っぱらってるよね、これ。まあ私も酔ってるし、聞いちゃうんだけど」 「??」  なんだかちょっぴり嫌な予感がするのは、この二人がめちゃくちゃ楽しそうだとちょっと怖い印象があるから。 「なんだよ、早く言えよ」  魁星も同じく嫌みたいで、ちょっと急かしている。 「攻め受けってやつ、どっち?」 「――――……」 「――――……」 「まあ聞かなくても、わかるっちゃわかるんだけど……」  ねえ、と電話で母さんと話してる、おばさんに。  オレと魁星は、顔を見合わせた。 「……マジで、どうかと思うんだよな、この酔っ払いたち……」 「そうだよね……認めてくれるのは嬉しいけど……」 「ほんと、さすがにどうかと思う……」 「うん……」  なんとなく、聞きなれない言葉が、ちょっと恥ずかしくて赤くなりながら、魁星と眉をひそめて言い合っていると。 「何それー?? せめってなあにー?」  無邪気で可愛い成哉の口からとんでもない言葉がでっかく、飛び出した。 「っ母さん!!」  魁星が、珍しくおっきい声を出して、おばさんをまっすぐ見つめる。 「マジでやめて」  低い声で言った魁星に、さすがに、酔っぱらっててもまずいかなと思ったのか、苦笑いしつつ。「もー、照れた息子にめっちゃ怒られちゃったじゃんー」とか電話で言いながら、リビングを出て行った。 「成哉、今のは酔っ払いのアホ発言だから。忘れていいぞ」 「えーそうなのー?」 「そ。成哉の肉、焼けそうだよ、ひっくり返して」 「あ、ほんと?」 「ウインナー食べるか?」 「食べる食べる」 「何本?」 「えっとねー、えっとー……五本!」 「食いすぎ」 「じゃあ三本ー!」 「……まあいっか。食え食え」  さっきのは忘れろとばかりに、魁星が成哉にウインナーと肉を与えているのを見ながら、ほんとに、うちの母親たちは、はーやれやれ……と、ため息をつきそうな気持ちだけど。  攻めと受けって……。  もー、信じられない。  あんな風に受け入れるのもおかしいけど、こんなこと聞く親って、居るのかな??  もーほんと……。  オレは、未来永劫、絶対酔っぱらわないようにしよう。  と誓った。  ……とか言ったけど。  ……攻めと受けかぁ……。  …………?   もちろん、なんとなくは、分かるんだけど。  予想って範囲でしか、分からないかも……。  チューしてくれる魁星が、攻め、かなあ……???  オレがしたら、またそれも攻め???  あとで魁星に聞いてみよっと。 (2022/9/14) おとまり編は次で終わりです(^^♪

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