2 / 27

第2話 もしかして間違いじゃないですか?

 日が暮れてから部屋にやって来た軍人さんは、体がすごく大きな人だった。  娼館で見かける軍人さんは貴族らしくスラッとした人が多いけれど、目の前の人は背が高い僕でも見上げなければいけないほど大きい。筋骨隆々っていうのは、きっとこんな人のことを言うんだろうなというくらい体つきもガッシリしている。思わず「熊みたいだ……」なんて思ったことは黙っておこう。  それにしても、さっきから軍人さんは僕をじっと見ているだけで、喋ることも何かすることもなかった。  高級娼館では娼婦や男娼を一晩買うことが普通で時間に余裕があるからか、お客さんによってはお酒を飲んだりお喋りをしてから行為を始めるという人もいる。軍人さんもそうなのかと思ってお酒やお茶を勧めてみたけれど、首を横に振るだけでいらないと意思表示されてしまった。  それじゃあ話がしたいのかと思って待ってはみたものの、一向に口を開く気配がない。それなら行為を始めたいのだろうかと様子を伺ってみたけれど、ただじっと椅子に座ったまま動くこともなかった。 (えぇー……。これって、どうしたらいいんだ……?)  こんなお客さんは初めてで、僕はどうしていいのかわからなかった。  その気がないのに大金を払ってまで娼館に来る人はいないだろう。それなら僕がその気にさせればいいだけなんだろうけれど、ムッとしているような顔で座っている大きな軍人さんというだけで、なんだか怖くて気後れしてしまう。 「えーと、その、……始めます、か?」  お伺いをたてるように行為を確認するなんて、男娼としては最悪な作法だ。でも勝手に近づいたら睨み殺されそうな気がして、僕はおずおずと声をかけた。  声をかけてから、そっと軍人さんを見る。  上級士官だと聞いていたけれど肌はこんがりと日焼けしていて、娼館で見かけるほかの軍人さんたちとはまるで違っていた。鋭い眼差しは僕より薄い碧眼で、短く刈り込まれた金髪は僕のよりもずっと色が濃くて茶色に見えなくもない。左頬には薄いけれど傷跡があって、それも強面に見える原因だろうなぁと思った。 (……えぇと、何か喋ってくれないかなぁ)  僕の言葉が聞こえなかったのかと思うくらい、軍人さんは無表情で無言のままだ。こうなったら勝手にやったほうがいいんだろうかと思い始めたとき、ようやく軍人さんが口を開いてくれた。 「あぁ」  時間が開いていたし、しかもたったひと言だったから、僕はそれが了承の言葉だと気づけなかった。  しばらくポカンとしていたら、軍人さんが眉を寄せたのがわかった。そのとき初めて行為を始めてもいいという返事だったのだとわかった。 (うぅ……、軍人さんってよくわかんない……)  軍人のお客さんは初めてだけれど、こんな感じだとみんな大変じゃないだろうか。それとも、僕がこんな見た目だから気が乗らないのだろうか。 (そうだとしたら、なんで僕を指名したんだろう……)  娼館の主人が采配を間違えるとは思わないけれど、いまさら「もしかして間違ったんじゃないですか?」なんて聞けるわけもない。  僕は恐る恐る軍人さんに近づいて、椅子に座ったままの彼の足元に膝をついた。目の前にはなんの反応も示していない股間がある。先に湯を使いたいというお客さんもいるけれど、軍人さんからそういった意思表示はなかった。僕の準備は終わっているし、行為を始めていいって言われたのであれば、あとはその気になってもらうだけだ。  僕はいつもよりも丁寧にズボンの前をくつろげた。まだ下着の中に隠れている逸物は体に見合った大きさのようで、思わずゴクリと喉が鳴ってしまった。 (……すごく立派な気がする。これ、全部口に入るかな……)  口淫で一気に育てる気満々だったけれど、目の前の逸物を見ると少しばかり自信がなくなる。まだ反応していないのに結構な質量のある逸物に、僕は完全に気圧されていた。 (いやいや、僕だって高級娼館の男娼なわけだし!)  僕にも男娼として、一応の自負がある。  娼館で働くことは世の中では見下される仕事かもしれないけれど、給金をもらっているという自覚はちゃんとある。そのぶん、きちんと役割を果たさなくてはとも思っている。高い金額を払ってもらっているのだから、お客さんには満足してもらわなくてはいけない。  それにお客さんが気持ちよくなって、幸せを感じてくれるのは僕も嬉しかった。お客さんから「よかったよ」と言われると、僕はここにいてもいいんだと言われているようで安心できた。 (……よし!)  気合いを入れ直した僕は、勢いよく下着に指をかけて前をずり下げた。ボロンと飛び出た逸物は思ったとおりの大きさで、思わずじっと見入ってしまった。 (……いけない、いけない)  立派だなぁなんて見惚れている場合じゃなかった。僕はまだ柔らかな逸物を片手で取り出し、まずは先端をペロッと舐めてみた。ピクンと反応したことに気をよくして、今度はパクンと咥えてみる。 (……嫌がっては、ないよな……?)  チラッと見た軍人さんの表情に変化はない。軍人さんから拒否されなかったと判断した僕は、口淫を続けることにした。柔らかな逸物を口の奥に迎え入れながら舌でしゃぶり、同時に唾液をたっぷりと竿に滴らせる。ちゅぽ、ちゅぽ、と濡れた音を立てながら頭を動かして、大きく育てようと刺激を与える。  いつもならこの段階でお客さんの逸物は立派になるんだけれど、軍事さんの逸物はまだ半勃ちにもなっていなかった。 (んー、これじゃダメってこと?)  一旦逸物を口から出した僕は、今度は唾液でベタベタになった竿に手を添えて固定してから、カリの部分に舌を這わせた。  きっと完全勃起したら理想的なカリ高だろうなと思わせる逸物は、受け入れる側の男娼を長くやっている僕にとっても初めてと言っていいくらい立派なモノだった。竿も太くて長いし、これでカリ高ってことは奥まで簡単に気持ちよくなれそう……そんなことを考えるだけで、僕の後ろはいやらしくひくついてしまう。  早く完成形が見たくてカリの縁に舌を這わせてベロベロと舐め、頭を傾けて横から竿を咥えるようにしてからカリの辺りを唇と舌でクニクニと刺激を与え続けた。しばらくいろんな方法で口淫を続けたけれど、軍人さんの逸物はどうしても完勃ちにはならなかった。 (えぇー……ちょっと自信なくすかも……)  男娼としての自信が崩れ落ちそうになる。これじゃダメだと思った僕は「ベッドに行きましょう」と声をかけて、強引に立たせて太い腕を引っ張った。軍人さんは何か言おうとしたようだけれど、あえて無視してベッドに横になってもらう。  ここまで口淫しても完勃ちしないなんて、男娼としてすごく傷つく。なんとしても完全体にしてやる! と意気込んた僕は、軍人さんのズボンも下着もさっさと取り払って足の間に陣取った。  半勃ちでも立派な大きさの逸物を手で擦りつつ、その下にあるたっぷりとした双玉をベロリと舐める。そのまま口に含んでハムハムと食はんだり、ちゅうっと吸ったりしているうちに手の中の竿がグン! と成長したのがわかった。  僕は心の中で「よっしゃ!」と拳を握りながら、ビン! と育った逸物を改めてしっかりと見た。 「うひゃぁ……」  軍人さんの逸物は僕が想像していたよりもずっと立派で、ずっと逞しかった。竿の部分はグンと長くて太くて、思っていたよりもエラが張っている。ほとんど凶器みたいな逸物だけれど、僕が涎が出そうなくらい見入っていた。 (これはすごいモノに出会ったぞ……)  口の中がじゅわっと濡れる。ほかの男娼なら頬が引きつりそうな逸物でも、僕にとっては気持ちよくしてくれる最高のモノにしか見えない。こういうところも僕が変だと言われるところなのかもしれない。 「んぐ……」  心の中で「いただきます」と合唱してから育った逸物を咥える。口淫に自信がある僕でも、半分くらいしか咥えることができなかった。 (どんだけ大きいんだ……!)  仕方がないので、しゃぶりながら唾液を垂らして竿の根元まで濡らし、口に入らない部分は右手で上下に擦った。左手はパンパンに膨らんだ双玉を優しく(しご)きながら、そこに溜まっている白濁を刺激するのも忘れない。口の中いっぱいの逸物は舌で舐めながら、同時に頬っぺたの粘膜に先端を擦りつけたりして刺激し続ける。  そのうち独特の味を感じて、軍人さんの先走りが増えてきたのがわかった。先走りを舌に感じているうちに、僕はどうしようもなくいやらしい気持ちになった。 (もっと舐めたい、もっと奥を突いてほしい、そのまま喉の奥で出してほしい……!)  そんなことを思ってしまう僕は、やっぱり変態だ。でもそういう行為が僕の快感に繋がるのだから仕方ない。  僕は十分育った軍人さんの立派すぎる逸物の先端を、ゴックンと飲み込むように喉の奥に招き入れた。思ったとおり、カリ高の先端が喉を圧迫して苦しかった。喉の奥を突かれることに慣れている僕でも嘔吐(えず)きそうになる。  そのくらい苦しくてしんどいのに、頭がジンジン痺れてきて気持ちよくなる。この苦しさと気持ちよさの狭間がたまらなかった。僕はきゅうっと吸い込むように口を動かして、逸物の先端を喉の奥で刺激した。  ビクン!  軍人さんの逸物が口の中でビチビチと動くのを感じた。ようやく僕の口淫で感じてくれたんだと喜んだのも束の間、急に頭を大きな手に押さえつけられてビックリした。そのまま逞しすぎる逸物がズン! ズン! と勢いよく喉の奥を突き始めて目を白黒させる。  ついさっきまで、軍人さんは人形みたいに寝転がったままで自分から動くことはなかった。それが急に動き出すものだから、覚悟していなかった僕の喉はやられ放題だ。  ズルリと引き抜かれた逸物は、次には上顎を擦りながら喉の奥に入り込んできて、そのまま奥の奥をグッグッと突いてくる。思わず嘔吐(えず)きそうになるのを我慢しながら、僕は逸物に歯をあてないように必死に耐えた。 (ちょ、まって、むり、もう奥のほう、ムリだか、らぁ……!)  ズンズン突かれる喉の奥は感覚がおかしくなっていて、吐き気と痛みで気持ちがいいのかどうかもわからない。少し前からみっともないくらいボロボロと涙もこぼれ始めているし、鼻水も涎もたくさん出ているはずだ。  それなのに仰向けに寝たままの軍人さんの腰はガンガンに動いていて、延々と僕の喉を性器のように扱っていた。 (……あぁ、そっか。僕の口って、性器なんだ)  そう思った瞬間、左手の中にあった軍人さんの双玉がググッと迫り上がるのを感じた。同時に立派すぎる逸物がいままでよりもずっと深い喉の奥に突き刺さって、グン! と膨れる。  ビシャ!  喉の奥でそんな音が聞こえたような気がした。奥に入り込んだ逸物がビクビクしながら勢いよく射精している。喉の奥深くに大量の精液を流し込まれた僕は、鼻の奥に痛みと雄の匂いを感じていた。  ドクドクと脈打ちながら精液を注ぎ込まれるのを感じつつ、いつの間にか僕の性器も弾けてしまっていた。

ともだちにシェアしよう!