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第4話 もしかしてムッツリさんでしたか

「はぁぁぁぁ……」  大きなため息をつきながら、ゴロンと寝返りを打つ。振動でお腹の奥がジンと痺れて、思わず「んっ」といういやらしい声が漏れてしまった。  それもこれも昨日のアララギ中佐との余韻が残っているからだ。童貞じゃないことは娼館を試したという話でわかっていたけれど、内容から性生活に満足できていないことは想像できた。だから僕的には筆下ろしみたいな気持ちだったのに、まったく違っていたのは大誤算だった。 「いや、僕としては気持ちよかったから満足してるんだけど……」  不意にお腹の奥をガンガン突かれたことを思い出して、後ろがキュンとしてしまった。  最初は完全に僕が主導権を握っていたと思う。  前回と同じように丁寧に、でもいやらしくアララギ中佐の逸物を口淫で可愛がった。前回と違ったのは口に入れたら早々に完全形になったことくらいで、ベッドで仰向けになっていた中佐は相変わらず人形みたいに動かなかった。だから僕も「初心な感じも可愛いなぁ」なんて余裕ぶったりした。  先端も竿も丁寧に舐めしゃぶった。もちろんその下にある、たっぷりと精液を貯めているであろう双玉にもチュウチュウと吸いついて、口に含んでから卵をコロコロと転がすように刺激した。カリの部分は丹念に舌で擦るように舐め上げてから、鈴口の中まで舌の先を射し込むように自慢の技を披露した。  そのおかげか、前回より随分早くに逸物が限界を迎えた。ビクビク跳ねているのを、前回と同じように先端をゴクンと飲み込むように喉の奥へと招き入れた。そのまま口の中のあらゆる粘膜を使って逸物を(しご)き上げた。  勢いよく吐き出された精液は、もちろん全部飲み下した。最後は尿道に残っている分もちゅううっと吸い取って、白濁が残らないように逸物全体のお掃除口淫だってした。 「真っ赤っかな顔も可愛かったんだけどなぁ」  顔を真っ赤にして、荒い息を吐きながら若干涙目になっているアララギ中佐は、やっぱり可愛かった。  たっぷりと吐き出したはずの逸物はそれでも完勃ち状態で、僕は内心舌なめずりした。これなら十分挿れられそうだと思い、「さぁ、お迎えしちゃうぞー!」と腰を跨いだところで、中佐が豹変した。急に尻たぶをつかんだかと思ったら、いきなりガン! と逸物を突っ込んできたのだ。 「あれはすごかった……」  一瞬にして目の前に星が飛び散った。あまりの衝撃に声なんて出なかった。 「でも、ちょっと無茶だよなぁ」  アララギ中佐の逸物を思い出しながら十分にほぐしていたからよかったものの、もし準備前だったら絶対に切れていた。切れなかったとしても痛いことには変わりない。慌てて動きを止めようとしたけれど、タガが外れたらしい中佐は僕の言うことなんて聞いてくれなかった。そりゃもう童貞の若者かっていうくらい、ただひたすら奥を突き上げてきた。 「まぁ、それはそれですごくよかったんだけどさ」  中佐の逸物は僕が想像していたとおりで、先端で擦られるとナカのどこもかしこもがビリビリしてすごかった。竿が太いから、ずっと前立腺が押し潰されるみたいでゾワゾワした。カリ高の部分が動くたびに肉壁がゴリゴリされるのもたまらないし、長いから簡単に先端が奥に当たってゾクゾクした。  もう、なにもかもが最高で、痛いことなんてすぐに消えてしまった。むしろ想定外の気持ちよさが全部の感覚を覆い尽くして大変だった。 「……んっ」  思い出しただけで、いまも後ろがキュン! って締まるし、前なんか自慰を覚えたばかりの少年みたいにビンビンになっている。 「しかも抜かずの三発なんて、理想的すぎるでしょ……」  回数が多いのは拷問だ、なんて言う男娼もいるけれど、僕は断然多いほうがいいと思っている。だから絶倫のお客さんは僕にとっては上客だし、男の僕はそう簡単に壊れたりしないから回数にも時間にも耐えられる。  もちろん僕も十分に気持ちよくなれればの話だけれど、大抵は気持ちよくなるから問題ない。お客さんも僕も気持ちがいい時間が長くなるなんて最高すぎる。回数のぶん、僕を求めてくれているみたいに感じられるのもいい。 「……うん、僕は相当な変態だな」  受ける側の男娼仲間からも、たまに引かれるくらいには行為自体が好きなんだと思う。  でも男娼になったのなら、どんなことでも気持ちよくなれるほうがいいと思うんだ。そりゃあ痛いことはナシだとしても、後ろの孔が閉じなくなるくらい突っ込まれる、なんてことくらいは、ぜひやってほしい。……なんて考えること自体が変態なんだろうけれど。 「もしくは、理想は抜かずの五発とか言うから引かれるのかな」  さすがにこれはお客さんには言えない性癖だ。言って引かれて指名されなくなったら身もふたもない。 「それにしても、アララギ中佐って、そんなガツガツ来る感じじゃなかったんだけどなぁ」  真っ赤になった頬と言い、口淫のあいだ寝転がっているだけの様子と言い、行為に慣れているようには見えなかった。それは強面に見える顔や雰囲気のせいかもしれないけれど、僕を指名した話からして手慣れているとは思えなかったのだ。 「……もしかして、中佐ってばムッツリさん?」  口や態度には出さなくても、頭の中では相当手慣れているのかもしれない。満足できないぶん、娼館に通い詰めていたのかもしれない。それなら、密かにすごい性技みたいなものを修得した可能性もある。 「……うわぁ、それもいいなぁ……」  想像したら口の中にじゅわっと唾液があふれてきて、口の端から垂れてしまった。誰に見られているわけでもないけれど、「うわ、みっともない」と慌てて手の甲で拭う。 「そっかぁ……本当はムッツリさんかもしれないのかぁ……」  可愛くて初心っぽく見えるアララギ中佐が、じつはすごくいやらしいのかもと想像するだけですごく興奮した。 「アララギ中佐、また指名してくれないかなぁ」  そうしたら、今度はもっといろんなコトをしてみたい。最初が騎乗位っていうのもよかったけれど、後背位もいいと思っている。  大きな中佐の手で腰をグッとつかまれて、逞しい腰をガンガンぶつけられるのを想像する。そんなふうに獣みたいに求められたら、それだけで僕はイッちゃうと思う。すごく求められている気がするから、体も心もものすごく満たされて気持ちがいいに違いない。 「……アララギ中佐、また来てくれるかなぁ」  僕はうっとりしたまま、股間をひと撫でした。それだけでビクビク震えるけれど、昨夜は過去最高の量を吐き出したから出ることはなさそうだ。それでも触れるだけの緩い快感に浸っていた僕は、気がついたらスヤスヤと眠ってしまっていた。

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