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番外編 旦那様を元気づけたい・後

「もぅ、むりぃ……っ」 「まだ三発だぞ? ツバキは抜かずの五発が理想なんだろう?」 「そ、だけど……っ。でも、もぅ、おなか、いっぱいだか、ひゃんっ!」  また後ろからズン! と音がするくらいの勢いで抉られた。あまりの勢いに、三回注ぎ込まれた精液がグジュグジュ音を立てながらこぼれていく。それがレースも小さな布も濡らして、ますますドロドロのグショグショになった。  それなのに少将は紐の下着を脱がそうとはしない。いまもお尻の部分のレースをずらしただけで、太くて熱い逸物をヌチャヌチャ出し挿れしていた。  少将いわく、紐の下着のいいところは穿いたまま前戯が楽しめて、そのまま本番も楽しめることらしい。そんな楽しみがあるなんて知らなかった。というか、そんなの娼館の(ねえ)さんたちくらいしか知らないんじゃないだろうか。 (少将ってば、どれだけ通ってたの……!)  そんなことを僕が思っているあいだも、少将はずっと楽しそうだ。ううん、今夜は最初からずっと楽しそうにしている。  紐の下着を穿いたままうつ伏せになって、お尻だけ上げると「いい子だ」と言って何度も尻たぶを撫でられた。鏡で見たとおり絶対に双玉がポロンしているはずなのに、それも可愛いと言って何度も揉まれた。  そうやって撫で回すことに満足したのか、今度はこぼれ落ちた双玉を舐め回された。それだけじゃなく吸いつかれもした。そのうちレースの上から孔を舐められ、舌で器用にレースを避けながらナカに舌を入れられたりもした。  僕はひんひん泣きながら何度も軽く絶頂した。みっともないくらい腰を揺らして、ビチョビチョになるくらい孔を濡らしながらヒクヒクする姿を見られまくった。  少し前の僕なら、これだけで不安で泣いていたと思う。でも、いまは恥ずかしいと思っても怖くはない。だって、全部少将がしてくれることだから。僕のことが大好きだって少将が言っているのと同じだとわかっているから平気になった。むしろ感じすぎるくらい嬉しくて、そのまま後背位で挿れられたときには呆気なく射精してしまったくらいだ。  そのあと正常位になって、小さい布から覗いているカリを見た少将に「エロいな」と言われながら奥を突かれた。当然、少将の硬い腹筋で擦られ続けたカリからは、精液なのか潮なのかわからない液体が何度も吹き出した。  そのまま対面座位になり、乳首についた金色の輪っかごと歯で甘噛みされながらイッて、気がついたら後背位に戻っていた。  その間、少将の逸物は一度も僕から出て行っていない。もちろんギンギンでバキバキのままだ。 (少将が理想の絶倫だって、知ってたけど……!)  そういうところも大好きだ。でもイきすぎてつらいし、それに精液でお腹いっぱいなのも苦しくてつらかった。 「もぅ、むりぃ」 「では、あと一回イッてから少し休むか」 「はぅっ」  全身フニャフニャになっていた僕は、もうお尻を上げることもできない。ただうつ伏せで寝転がっている状態なのに、少将はそんな僕を気にすることなく奥に奥にと逸物を挿れてくる。  そんな状態だと、僕の性器は小さい布ごとベッドで擦られまくることになる。このとき僕は初めて、ヌルヌルのグショグショの布で先っぽを擦られると尋常じゃないくらい気持ちがいいんだってことを知った。 「ぁ、あ、あンっ!」 「……あぁ、ツバキの中は、いつも気持ちがいいな……」 「や、ぅ! もう、奥は、いっぱい、だからぁ」 「そうだな。手前も奥も俺の精でいっぱいだ。それどころか、……ほら、こうして少し突くだけであふれ出す」 「ん……っ! もぅ、おく、つかない、でぇ……! からだ、おかしく、なるぅ……!」 「なればいい。いつでも俺を欲しがり、俺の匂いをさせて、いればいい……っ」 「ひ、ぃ! やぁ、イく、おくで、イっちゃう!」  少将がのし掛かってきたのがわかって、押し潰されるかと思った。そのくらいグゥッとお尻を潰されて、そのぶん、大きくて太くて硬い逸物が奥の奥に挿入(はい)ってくる。ツプッと突き抜けた先の壁をグイグイ押して、もっと奥に挿入(はい)ろうとしている。  僕は、本能でそれ以上奥に挿入(はい)ったらダメだと思った。それなのに少将の逸物はどんどんその先に挿入(はい)っていくし、僕の体も喜んで迎え入れてしまう。そこは本当にダメなのに、それ以上は絶対に挿入(はい)らないところのはずなのに、ものすごく狭いところを熱くて硬いものがズンズン押し入ってきた。 (少将、待って! 僕のお腹も、待って!)  必死で手足をばたつかせた。自分ではそうしているはずだけれど、本当はどこも動いていなかったのかもしれない。でも、暴れたくなるくらい僕は怖かったんだ。  だって、こんなの体がおかしくなるに決まっている。きっととんでもないことになって、イッたまま戻って来られなくなる気がした。そのまま頭がおかしくなるんじゃないかと怖くなった。 「あン……っ! だめだめ、もぅダメぇ! イッちゃう! すごぃの、イッちゃぅからぁ!」  おでこをベッドに擦りつけながら、ブンブン頭を振った。それなのに少将の逸物はまったく止まってくれない。それどころか、ますますお尻を潰すくらい少将がのし掛かってきて、動かしていたはずの足が敷布に押さえつけられる。 「も……ッ、むり、むりむりぃ……。もぅ、おく、いれなぃ、でぇ!」  泣きながら必死に叫んだら、目の前に少将の大きな腕が見えた。それに、背中が熱くなって少将がぴたりとくっついたこともわかった。 「ツバキ」  耳元で聞こえた低い少将の声に、体がビクッと震えた。声だけでも気持ちがよくて、頭の奥がチカチカする。 「俺の精を、体の奥深くで、たっぷり味わってくれ」 「ひ――ぃ……ぁ――ぁ……!」  内臓が押し上げられて潰れたのかと思った。そのくらい奥を突かれて、ものすごく深いところをグリッと擦り上げられた。その瞬間、目の前で星が弾け飛んだ。 「イッ……ちゃ、ぅ……っ!」 「グゥ……ッ」  最後は気持ちいいのかどうかも、よくわからなかった。ただ少将の逸物が信じられないくらい奥に挿入(はい)って、直接内臓を濡らされたような気がした。  ……わかったのはそこまでで、耐えられなかった僕はそのまま意識を飛ばしてしまった。  あんなにすごい目にあったのに元男娼だからか少将との行為に慣れたからか、次の日、僕はいつもと変わらず起き上がることができた。それにはさすがに少将もビックリしたみたいだったけれど、やった本人が驚くなんてどうなのかな……。 (まぁ死ぬほど気持ちよかったから、僕もよかったんだけど)  あんな奥まで挿入(はい)るなんて思わなかった。やっぱり少将のが大きくて長いからだろうなぁなんて思い出したら、後ろがジーンと痺れたように疼いてくる。それでも、さすがに今夜はできそうにない。  長い時間、それも何度も擦られたからか後孔の縁が真っ赤に腫れてしまった。念のため薬を塗ったけれど、さすがに一日で腫れは治まらないだろう。そのせいでできないのが残念だ、なんて思ってしまう僕もやっぱり変態かもしれない。 「ツバキ、大丈夫か?」 「はい。薬も塗ったし、あそこ以外は大丈夫です」  少将の太い眉が少しヘニョッとしているのは僕を心配している証拠だ。最中はあんなに強引ですごいけれど、普段はこんなにも優しい。そりゃあ強面だし左頬の傷跡も少し怖く見えることもあるけれど、笑うと大きなワンコみたいに可愛いくて、僕の大好きな旦那様だ。 「自分でしておいて何なんだが、やっぱり俺の妻はツバキにしか務まらないな」 「あはは。エッチは僕に任せてください」  むしろ、エッチなことでしか役に立てない気もする。 「俺は日々こうして実感しているというのに、妻は精神面でも肉体面でも大事な存在だということが、あの古狸たちにはわからないのだろうな」 「古狸?」 「王城に巣食う軍人や貴族のことだ」  あ、今度は強面がもっと強面になった。たぶん、大変なお仕事で何かあったに違いない。 「あの、お仕事、お疲れ様でした」 「あぁ。こういうことがあるから少将なんてやるもんじゃないと思っていたんだが……。いや、ツバキを妻にできたのだから、そう思うのは贅沢か」  よくわからないけれど、少将が僕を身請けしてよかったと思ってくれているなら嬉しい。これからも僕ができることで少将を元気づけようと決意する。  そんなことを考えながら少将を見ていたら、「次は真珠を使った下着にしよう」なんて言い出すからビックリした。しかも「真珠の道具も取り寄せるか」なんて言っていたけれど、真珠の道具ってなんだろう。聞きたいような、でも聞かないほうがいいような……うん、聞かないでおこう。  その後、少将がお屋敷に帰れないくらい大変だったお仕事の話を聞いた。  なんでも、まだ一人も子どもがいない第一王子様に、大きな貴族の家から二人目の妃殿下を迎える話が出ていたらしい。そのせいで妃殿下のお父さん、少将の上司でもある大将がすごく怒って、軍と貴族が大げんかになりかけていたという話だった。そのせいで、少将もあちこちに呼び出されてお屋敷に帰って来られなくなったなんて、軍人さんはやっぱり大変だ。  そういうことでお城の中も大変なことになっていたそうだけれど、最後は妃殿下が「そんなに子どもが必要なら、わたくしが何人でも生むから外野は黙ってなさい!」と言ったんだとか。あんなに可愛くて小柄な妃殿下が、大勢の貴族や軍人さんたちにそんなことを言うなんて、すごいなぁと感心してしまう。  それを聞いた大将は大喜びで、二人目の妃殿下をと話していた人たちも静かになった。おかげで少将もお休みがもらえたんだと教えてくれた。 「今回のことで一番喜んでいるのは、大将閣下じゃない。殿下のほうだろう」 「王子様が?」  どうして王子様が一番喜ぶんだろうか。一度だけ会ったキラキラした王子様を思い出しながら少将に尋ねた。 「これまでまだ成人前だからと閨は別にしていたそうだが、妃殿下自らああ発言されたんだ。もう十八になられたことだし、今後は毎年のように子が生まれるだろうな」 「ま、毎年……それは、すごいですね」 「殿下も一人の男だということだ」 「へ、へぇ……」  もう一度キラキラした王子様を思い出す。見るからに王子様な姿からは、毎年子どもが生まれるようなことをする人には見えなかった。でも少将がそう話すということは、もしかして少将みたいな人なのかもしれない。 (妃殿下、随分小さい体だったけれど、大丈夫かなぁ)  僕でもこんなに大変なのにと、密かに妃殿下を心配する。  その後、お城のいろんなことはきれいに落ち着いたようで、少将も以前のように毎日お屋敷に帰ってこられるようになった。  そんな少将を朝見送ったあと、僕は日課になった裁縫をすべく裁縫箱を用意した。今年こそ少将に贈るものを作ろうと思って、初めて挑戦していることだ。 「今年の収穫祭のあとは、これをあげるんだ」  僕の手の中には、普通のボタンよりも少しだけ大きい刺繍ボタンがある。手先が不器用な僕は何個もダメにしたけれど、そのたびに使用人のお姉さんが優しく教えてくれて、もうすぐ全部完成するところだ。  ほかにもいくつか贈り物の候補を考えた。そのなかで飾りボタンを選んだのは、いつも身につけてもらえるものだとと思ったからだ。  刺繍模様は、僕の故郷でたくさん咲く紫詰草の中にたまに咲く雪華詰草(セッカツメクサ)にした。理由は、少将の故郷は雪がたくさん降ると聞いたからだ。故郷の話を聞いたとき、僕は真っ先にこの花のことを思い出した。それに真っ黒な軍服に白色はよく似合うと思う。  少将、喜んでくれるかなぁと思いながら、最後のボタンにチクチク刺繍針を刺す。このボタンを付けた少将を想像するだけで口がもにょっとなるのを我慢しながら、「喜んでくれるといいなぁ」と思いながらチクチク、チクチク刺繍を続けた。

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