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第24話
慌てながらも寧人 はふと見た鏡に自分が映ると、髪の毛はサイドを刈り込みすぎている。いわゆるソフトモヒカンである。
でも毎日一護 がこまめにメンテナンスしてくれてしっかり整えられ今までこんな髪型にしたことがなかった寧人にとっては気に入ってはいる。
「でもこれさすがにやばいかな……」
髪型はどうにもならないと思った彼はクローゼットに行く。スーツはあったか?
ほとんど外に出ていない、リモートワーカーの彼は前にフードジャンゴの日本支部に行ったきりでその時に来ていたテロテロのスーツしかないことを思い出した。引越しした際に捨てたが買っていない。
「一護の借りるか? でも明らかにあっちの方がサイズ大きいし……」
寧人の会社は仕事の際、必ずスーツとは決まってない。リモートワークの際もそうであったが、さすがにそれと同じではよくない。いわゆるビジネスカジュアル、寧人の会社ではそれを少し崩した感じの服装を推奨している。
自分のタンスの中を開ける。いつも決まった服を出しては着て、洗濯されて畳まれてしまわれての繰り返しで同じ色形のものを着ていたが、さすがに部屋着と同じものでは……と悩む。
悩んだ寧人は一護に電話する。何回かコールした後出た。
「ごめん、今自転車止めたから。どうしたの?」
「あ、その……会社に行くことになって」
「あらま! 大丈夫? 電車乗れる?」
「なんとか……あの、その、服が無くて。一護の服を借りても良い?」
「わたしのでも良いけどクローゼットに白い紙袋ない?」
一護にそう言われて寧人はスマホを耳に当てながらクローゼットに入る。すると言われた通り白い紙袋がいくつか置いてあった。
それぞれには高級ブランドの名前が入っている。
「ねぇ、たくさんあるんだけど」
「ああ、どれでも良いから好きなの選んで。
ちゃんとその紙袋ごとにコーディネートしてあるから。靴も横の箱にあるから」
「えええっ?! てか高級なものばかり……どうしたのこれ」
「そりゃ寧人のための服。サイズはぴったりなはずだから。寝てる時に計らせてもらったからー。じゃ、またー」
と電話は切れてしまった。無数の服の入った紙袋と靴の入った箱。
とりあえず寧人は適当に選んだジーンズの入った袋を取り出し、ベージュのジャケットに白シャツ、ビジネスカジュアル。全てタグが取り外してあり、すぐ着用できた。
「ほんとだ、サイズぴったし……」
靴は黒のスニーカーを履く。これまたぴったり。玄関前の鏡を見ると今までにない自分の姿が映っていた。
つい頬に手を当ててにやけてしまう寧人。自分の姿に驚き、惚れ惚れし、なんと無く一周その場で回ってみる。
「すごいや、モデルさんみたいだ……あ、そんな場合じゃなかった!」
寧人は服と一緒に入ってたショルダーカバンに財布や鍵、スマホを入れて家を出た。
何故だか前に出社した時よりも足取りは軽かった。久しぶりの出社、顔は綻ぶ。
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