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第26話

 慌てて電車に降り、そこが各駅停車ではない駅であったのと寧人(よしと)は全く知らない場所であった。 「いたいたいたー。すいません、駅員さん。うちの部下が……」  駆け付けたのは古田であった。本当は一護(いちご)に連絡をしたかったのだが古田からたまたまメールが来たため、知らない駅に降りてしまったと返したのである。  駅員に二人で頭を下げ寧人は古田の営業車に乗った。 「たく、なにやってんだよ。たまたま営業先に行ってその近くだったからよかったものの。最初から迎えに行けばよかったか?」  狐目の古田に睨まれて怯む寧人。 「すいません、こんな年で迎えにきてもらうなんて……」 「そうだよ。てかなんでこの駅で降りた」  そう言われると寧人はいうことはできない。女性を見ただけでムラムラして爆発して電車を降りてトイレでオナニーしたことなんぞ。  だが寧人は痴漢と一般人は紙一重だと思い知った。あの時に理性を抑えられることが奇跡だと。  まだ古田はしかめっ面をしている。まだ何か言われるかと身構える。 「髪の毛も……それやばいだろ。まぁ服装はオッケーだけどな」 「ありがとうございます……」 と少しハニかむ寧人。古田は鼻で笑う。 「褒めてないけどな」  とやはりまだまだドSなところを散らかせる古田。  寧人はふと頭をよぎる。一護に教えてもらったあの言葉を。 「バタフライスカイ」  その言葉を言った瞬間、古田は固まった。寧人を二度見をする。 「おまえ、なんでそれを……」 「バタフライス……」  口を塞がれた。古田は顔を真っ赤にした。 「いくぞ、昼過ぎからの菱社長とのビデオチャットもあるしな」  と車のエンジンをかけた。寧人は一護から古田が高圧的な態度をとってきて自分にとって無理! と思った時にそういえと言われていたのだ。  なんのことかわからないが、なんとか出社できるとホッとしたようである。    だがほっとしたのも束の間……そのホッとしたのと、オナニーしたせいで疲れてしまい寧人はウトウトし、気づけば寝てしまったのだ。  古田はずっと運転しながらもぶつぶつと寧人に話しかけていたが停車している時によだれを垂らして寝ていた彼に気づきコンビニに入る。コンビニの脇に車を停めた。 「このドアホが。何寝てる……」  と声をかけても全く起きない。まだ会社まで30分かかる。  呆れた古田だが、助手席を倒して寧人を横にする。その際、寧人に体を近づけ至近距離で顔を見つめる。 「寝顔可愛い……な」  と、ふと先日のビデオチャットで悶える寧人の顔、チラッと覗かせた白い肌を思い出す。 「あんな顔されるとたまらん……」  古田はニヤニヤし始めた。そして気付いたのは寧人のあそこである。盛り上がっている。 「体小さい割には大きいんだな」 とズボンの上から優しく触る。 「温かい」  古田は鼻息を荒くする。コンビニの脇に停めたことをいいことに行為はエスカレートしていく。 「んあっ」  と寝ていた寧人が反応する。古田は驚いたと同時に完全に寧人に覆いかぶさってしまった。 「ああああああっ」 「ああああああっ」  向かい合った二人は変な声を出してしまった。

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