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第60話
2人の旅も佳境に入った。
「ぼくはこの地に来たのは初めてなのにみんな優しい」
一護 はすごく嬉しそうである。
「そうだよなー。動画も人気で僕らのことも知ってくれた。ぼくの人生ではありえないことだったな。こんなに外に出て、いろんな人に出会って、いろんな人に知ってもらって……」
元引きこもりの寧人 も感慨深い。
「もし僕が麻婆丼頼んでなかったら……一護が配達人じゃなかったら……一護がお世話好きじゃなかったらこんなぼくはいなかったよ、ありがとう」
少し照れながらも寧人は一護に伝えた。
「なによ、いきなり」
「なんとなく、言いたくなった」
「ふふふ、嬉しい……ほんとご縁って不思議よね」
「うん」
一護がいきなり顔を逸らした。そして両手を覆った。
「どうしたんだよ、一護」
「なんでもない、早く行こうよ……休憩は終わり」
と言いながらも一護は座り込む。手を覆ったまま。
「寧人が調子に乗ってめちゃめちゃになったけど、それでもこうやって2人で旅できてよかったよ」
「一護……」
「まだこの旅終わりたくない。終わったらどうなってしまうんだろう……」
一護は肩を震わせ泣いていた。寧人は実はビデオをこっそり回していたが止めた。
「僕らの旅は終わらないから。これからだよ……ねぇ、40のこのおっさんを外に出したからには最後まで一緒に共にしてくれないかな」
「寧人っ……」
顔を見せた一護は涙と鼻水でぐちゃぐちゃであった。
寧人はタオルで拭いてやる。
「汗臭いけどごめんな」
「大丈夫、慣れてる」
「なにが慣れてるだっ……」
「あなたの汗と他の人の匂いがした服を回収して洗って干して畳んでいたのは僕なんだから!」
「そ、そーでしたねぇ」
「寧人の汗の匂いも加齢臭の匂いも精液の匂いも全て好き。でも他の人のは混ぜちゃだめ。混ざるのは僕のだけ」
と一護は寧人に抱きつき、寧人は抱きしめた。
「おーい、いちゃついてんなー!」
と通りすがりの車から若い男たちからのヤジ。2人は恥ずかしくなってしまったが、その男たちが降りてきてジュースを持ってきた。2人の動画を見てこの街までわざわざ来てくれたそうだ。
2人の動画を見てこの街に来る観光客も増えたという。
「よし、行くぞ……いちゃつくのは夜にでもできる……」
「いやだー、今夜も?」
「違うって、今日は流石に脚パンパン」
「パンパン? どこが?」
「どんだけお前は貪欲なんだ……」
流石にこの夜は寧人の言う通り疲れ果ててしまった。一護の方が先に寝てしまい、寧人は起きて動画を放送局に送り、動画を見てる人からのコメントに返信した。
一護の寝顔を見て寧人は呟いた。
「一護、今日泣いちゃったけど泣かせるつもりなかったなぁ。気持ち伝わったかな……」
相変わらずしっかり好きと言えない寧人。
「ちゃんとストレートに言えばいいのにな、僕も」
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