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第62話
古田は笑ってた。少し前あった時よりも雰囲気も違う? と寧人は思った。
「なに? 古田さん、だなんて他人事のよう。リンでいいのに。もう僕の部下じゃないのに」
「な、なんで……その、リンがここに」
「ん、何って」
「あー、ベクトルユーの同僚として?」
古田は首を横に振った。
「ちがう。ここに呼ばれてきたんだ。なぁ、一護」
すると一護 が古田の隣に来て肩を抱いた。
「リンには僕の会社に入ってもらうためにベクトルユーをやめたんだよ。僕らがこの旅中に色々した準備もしてもらってた」
「えっ、てことは僕の同僚になるの? また」
寧人 は困った顔をした。せっかく一護との愛を確かめ合ったというのに昔の愛人がまた近くにいたら……と焦っていたが。
「なにをいう、同僚じゃなくて寧人は僕の上司になるんだよ、社長!」
「しゃ、しゃ、しゃ? 僕が社長?!」
「一護、なにも話してないのか」
「ねえ、僕が社長? リン、そんなのどうすればいいの?」
「僕は知らないけど副社長が話したいことあるらしいよ」
寧人は全くもってなにもわからなくて焦る。一護に詰め寄る。
彼の顔はとても穏やかになっている。
「寧人、僕のパートナーになって欲しい」
「パ、パートナー!!!」
「仕事……と、人生においても」
一護は古田からとある小さい箱を受け取り、寧人の前に跪いた。箱を渡した古田は少し苦い顔をしているが。
寧人はこの場面を見たことがある、まさかこんなことをされるとはと。しかも年下の一護に。
その小さい箱の中には指輪が入っていた。一護は照れ臭そうに寧人を見上げている。
「おーっと! 一護さんが公開プロポーズですぅううう!」
タレントがそう叫ぶとカメラも更に寄ってきた。
周りの人たちも歓声を上げる。
「あわわわっ、そ、そ、それって……」
「そう。籍入れることはできないけど寧人と共に一生一緒に……」
「あああああっ、そそそそそそ」
「前の時はちゃんと気持ちを聞いてなくて付き合ってない状態だったよね。寧人の気持ち、しっかり聞きたい」
一護はじっと寧人を見つめる。目力が強い。寧人はパニックになりつつも、ちゃんと気持ちを口にしていなかったが、まさかこんなに人がいる前で気持ちを言わされるとは思わなかったのだろう。しかも一護の家族、同僚、そして関係のあった古田もいる。この映像を見ている人たちもいる。
「まさか一護、僕にその言葉を言わせるために追い詰めてるのか……ぼ、ぼくをっ!」
そう口にすると一護はニヤッと笑った。
「……一護……好きだっ……」
顔を真っ赤にして、一護に抱きついた。
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