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ep.2 いざ生徒会へ
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、頑張ってね臣君」
玄関先。僕と水瀬さんを見送るのは、朝は忙しいはずの桝谷さんだった。
他のメンバーはまだ寝ているらしい。
2人揃って家を出た後、僕は水瀬さんの車の助手席に乗り込んだ。
仕事へ向かうついでにと、学校まで送ってくれるという。
「そういえば、家までの道程は分かる?」
「全然分からないです…。叔父さんの車で道中寝てしまっていたので」
「なるほど、じゃあゆっくり覚えていくといいよ。今日は千里君と帰ってくるんでしょ?」
「はい、今日は予定が無いそうなので」
「それなら迷子になる心配も無いね、本当は僕が迎えに行きたかったんだけど」
言いながら、水瀬さんは一瞬だけこちらを見てから前へ向き直る。
「いえ。水瀬さんもお忙しいんですから気にしないでください」
その瞬きほどにも感じられる一瞬に、たまたま目が合ってしまった僕は慌てて俯く。
「ありがとう、帰りは会食で少し遅くなるからね」
「分かりました」
「と、もうすぐ駅だね」
水瀬さんの言葉に辺りを見渡すと、見覚えのある景色が広がっていた。
「ここまでありがとうございました」
「いえいえ、頑張るんだよ」
「はい!」
バスターミナル付近の道路へ止まった車から降りようとすると、水瀬さんの手が僕の頭を撫でる。
「あ、あの…」
「ふふ、行ってらっしゃい」
「…行ってきます、水瀬さんもお仕事頑張ってください」
「うん、ありがと」
名残惜しくも水瀬さんの手は頭を離れて行き、僕は改めて車から降りた。
そして扉が閉められたのを確認してから間もなく、水瀬さんの白い車は走り去って行く。
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