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アス第1話

 俺、冬崎 明日楽(とうざき あすら)15歳。今何故か放課後の人気のない図書室で、男の先輩に本棚ドンされてます… 「な、なんだよ。」 「いや、久しぶりだなぁって思って。アスは全然変わってないね。ふふっ、かーわいい。」 「っ!お前はキャラ変わりすぎだろ!なんだよ。中学の時には俺のことガン無視してたくせに。」 くっそ、無駄に整った顔を近づけるんじゃねえよ!しかも俺より二十センチ近く背高くないか?小さい頃は小柄で二歳下の俺とそこまで背も変わらなかったのに…    この男は二つ上の先輩、秋月 暁弥(あきづき きょうや)。 家が近所のキョウは小さい頃からなぜか同級生とは遊ばず、毎日のように俺の家に来ていた。別に同級生にいじめられていたわけでもないのにな。 いや、寧ろ崇拝されてたんじゃねぇかな? 成績はトップだし、運動神経もいい。顔もちょっとつり目だが背さえ伸びればモデルになれそうなくらい整った超絶イケメン。 なんと言うか幼い頃からカリスマ性のあるヤツだったんだ。  付いたあだ名が完璧王子。普通なら小っ恥ずかしすぎて絶対拒絶するようなネーミングだが、キョウは何て呼ばれてようが全く興味がないらしく、好きに呼ばせていた。    俺は俺で、サンタさんの存在を信じているような純真な同級生を馬鹿にしてる嫌なガキだったし、二歳年上で精神的に大人びていたキョウと遊ぶのは純粋に楽しかったんだよ。  幼稚園の頃からトレーディングカードゲームを仕込まれ、点数の計算をするために大きい数の足し算引き算が出来るようになったし、スイミングスクールに通っていたキョウに学校のプールで泳ぎ方も教わった。  ちょっとした悪戯をしても上手い言い訳で逃げるすべも学んだ。 あいつ勉強が出来るだけじゃなく、無茶苦茶頭の回転も速いんだよ。 しかもガキのくせに大人でも平気で丸め込む人を掌握する話術持ち。    俺もそこそこ頭が良かったから、小学校の勉強が簡単すぎて、自分の歳よりちょっと上の子が習うことをキョウに教えてもらうのも面白かったんだよな。 もちろん大人の丸め込み方も。 マジで勉強になった。    一人っ子故にか、子ども同士のじゃれ合いが苦手で、しかも性格的に甘え下手で捻くれていた俺と飽きもせず毎日遊んでくれるキョウが大好きだった。 俺達はあの頃、ずっと一緒だったんだ。  なのに、キョウが六年生になり急に背が伸びだした頃から徐々によそよそしくなり、家にも遊びに来なくなった。 俺はわけが分からず悲しかったよ。けど、 「また俺と遊んで」 なんてすがることは性格的に無理。しょうがないと割り切り、同級生と遊ぶようになった。俺もこの頃には普通にコミュ力もあったからな。    でも、ガキな同級生と遊んでいても物足りない。キョウから得られなくなった刺激を求めて俺はよく本を読むようになった。  もともと俺の母さんが日常的に読書をする人で、本には不自由しなかった。 しかもあの人、読書は娯楽!って言い切ってて、読んでて楽しい本しか手元に残さない主義。小難しい本も読んでるみたいだけど、俺にはひたすら面白い小説を教えてくれた。    けど、小学生に性描写や暴力描写がある本推めるか?なかにはBLまであったぞ。 母さん曰く、 「BLにはBLと言うジャンルに埋もれきれない物語として素晴らしい作品がいっぱいあるから読んだ方がいい。」そうだ。 しかも大量に読み散らかした中からの推し小説なんで文句なしに面白いんだよ。  いや~ハマったね。おかげさまで、俺もBLを読むのに抵抗はなくなった。自分が男とするのは考えられないけど、何て言うかな~現実味のないファンタジーと同じ感覚で、一つの作品として楽しく読める。 腐男子ではないよ。小説の一ジャンルとして抵抗がないってだけで、BLばっか読んでるわけじゃないからな。そこに萌えもない。    あっ、俺のこと本好きの大人しいヤツって思った?本好きが全員隠キャだと思うなよ。俺はクラスでもそこそこカースト上位キャラだ。 なんせ同級生はガキなんだよ。  俺がキョウ直伝の人を掌握する話術と、本から得た知識でちょっとアドバイスしてやったら、なんやかんや色んなヤツらに相談を持ちかけられるようになった。 的確なアドバイスをくれるって評判のちょっとした人気者だ。  俺の周りにわらわらと同級生が集まってくるが、昔のキョウのようないつも一緒の親友ポジションは作らなかった。 けど、クラスで孤立するのも面倒なんで適当にみんなと仲良くやってる。

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