28 / 61
第28話
狂気を秘めた静寂が場を支配する。
「……あっちは見かけ倒し。こっちが本物の作業場 ってわけか」
鎖とパイプが擦れ合う金属音がうるさく響いて耳障りだ。
スプリングもガタがきてる、こんな寝心地最悪のベッドを使う奴の気がしれねえ。
兄弟で共有するトレーラーハウスのベッドを思い出す。独房の寝床かよとよく憎まれ口を叩いた狭苦しい寝床、車の振動が直に響いてよく起こされた。スワローは寝相が悪く隣で熟睡中の兄をよく蹴飛ばした。
蹴落とされた兄は床で額や肘を打ち、しょっちゅうこぶをこさえていた。
『ひとりで寝たい』
『自分のベッドが欲しい』
『もうアイツと寝るのやだよ母さん、体がいくつあってもたりない。床やトイレで寝る方がマシだ』
アイツがうじうじ言うのが悪い、女々しくべそかいて嘆くのが悪い。
物心ついてからずっと一緒だったのに、一つのベッドを分け合ってきたのに、いまさら離れたいとか自分だけのベッドが欲しいとかぬかしやがるから懲らしめてやったんだ。俺は悪くねえ、絶対悪くねえ。
ピジョンはわがままを言わないいい子だ。大人しく聞き分けがいい。そのピジョンが枕を抱え、母に訴えているのを偶然聞いてしまった。スワローは大袈裟に鼾をかき、寝たふりをして続きに耳を澄ませた。
『俺、トイレに引っ越す』
『トイレは狭いわよ』
『それでもいい、スワローといるよりマシだよ。アイツと一緒じゃ全然寝た気がしない』
寝た気がしない?
偉そうに。アレは俺のベッドだ、それをお恵み深く使わせてやってんだから有り難く思え。
だったらよく眠れるようスッキリさせてやる、毎晩ぐったり果てさせてやる、出すもん出しゃ朝までぶっとおしで寝れんだろ。
ピジョンが自分から離れていくのが許せない。
そっちがその気ならあの手この手で縛り付けてやる。
あの狭苦しいベッドが懐かしい。ここと比べりゃ極楽だ。ピジョンが周りの壁にべたべた写真を貼りまくるのがうざったかったが、ここは殺風景すぎる。
「……………」
「大人しいね。さっきまでの威勢はどうしたんだい」
「……………」
「怖がらなくていいよ。君もすぐ仲良くなれる。友達が増えるのは大歓迎さ」
レイヴンが再びベッドに腰掛ける。
顔の中心に視線が注がれているのを皮膚感覚で悟る。無感動な黒瞳が非人間じみて薄ら寒い。
レイヴンの手がだしぬけにタンクトップにかかり、胸元まで大胆に捲りあげる。
「!っ、」
「あーあ、暴れたから傷が開いて血が滲んでるじゃないか」
「あぅぐっ、いっぐ」
乳首に貼られた絆創膏にジクジクと血が滲みだす。
赤く染まった絆創膏、その下の膨らみを爪の先端で掻かれ鋭い痛みに喉が仰け反る。
「……その耳全部自分で開けたの?背伸びしたい年頃かな。きちんと消毒しないと黴菌が入って膿む」
「さっきも……聞いた、ぜ」
「痛いのが好きなのかい?」
「イケてるだろ……最高にクールだ」
「耳をピン刺しにする痛みもへっちゃらの自分カッコイイ、みたいな?」
「痛ッぐ、い゛やめ」
絆創膏越しに執拗に乳首をひっかかれ、ねちねち捏ね回される痛みに脂汗がふきだす。
正直涙が出るほど痛い。
耳にピンを刺す理由はいくつかあるが、目の前で穴を開けるたびピジョンが卒倒しそうに青ざめるのが面白くて、すっかり癖になってしまったというのがかなりの比重を占める。
両手でひしと顔を覆い「やめろやめろやめてって、バイキン入って耳がダンボになるよ!」と喚くアイツときたら傑作……
「悪い子だ。刺青まで入れて」
陰険な思惑を孕む囁きが現実逃避の回想を蹴散らす。男にしては細く優美な指が耳介をくりかえしなぞり、生ぬるく湿った吐息を絡める。
「まだ沢山あるね」
耳朶から耳介にかけて輝く安全ピンを一本一本摘まんで軽く揺する。振動が直に響く。
「何本刺せるかためしてみようか」
喉が引き攣るような音をたて、背筋が棒を呑んだが如く突っ張る。
レイヴンが静かに含み笑い、耳朶をねちっこく弄ぶのをやめて一旦離れる。
じわじわ真綿で締めるような優しい脅しが、少しずつ確実に精神を毒して削り取っていく。
乳首の絆創膏はスワローの汗とレイヴンの戯れで剥がれかけ頼りなく端が揺れる。
「乳首……亀頭……尿道。どこが一番カッコイイかな。ねえ、無口な君はどこがいい?」
殺人鬼がこの上なく楽しそうに指折り数えて振ってくる。
スワローは酷く苦労して顔の筋肉を操作、すっかり狂ってしまった自分のペースを取り戻そうと不敵な笑みを拵える。
「ぺらぺらよく動くテメェのお口をピンで縫い閉じたいぜ」
舌は動く、口も回る、まだイケる、まだやれる、ピンピンしてる。自己暗示をかけ平常心を保つスワローを見下ろし、レイヴンが妙にはしゃいだ声を出す。
「その調子その調子!まだ何もしてないのに勝手に絶望されちゃがっかりだ、友達みんな君と遊びたがってるのに興ざめだろ?全員終わるまで寝ちゃだめだよ」
「オトモダチみんなと握手すりゃいいの?それともキス?」
レイヴンの言動は支離滅裂で常軌を逸している。
どうやらこのド腐れ外道のイカレ殺人鬼は、自分が犯して殺したガキの形見を一個の人格を持った「友達」と思い込んでるらしいが「みんな遊びたがってる」「全員終わるまで寝ちゃだめ」とはどういう意味だ?
胸の奥でとてつもなくどす黒い不安が蠢く。
スワローの顔の横に手を突いて押し被さり、瞳孔が開ききった目で嬉々として畳みかける。
「どの子と一番最初に友達になりたいか特別に選ばせてあげるよ。遠慮せず言ってごらんよ、さあ」
「はぁ……?」
「スティーブ?スチュアート?レオナルド?アンドリュー?ダニエル?イーサン?ニコラス?ケビン?ケビンは大きいから君には少しキツいかもね、サイズが合わない。ああ、でもそれでもいいなら構わないよ僕は、どうせみんなと友達になるんだもの早いか遅いかだけの違いさ、最初に大きい子を受け入れたほうがのちのちラクだし。血はいっぱいでるかもしれないけどね、どうせ捨ててしまうから構わない。このシーツは安物だから」
歌うような節回しで次から次へと殺人遍歴の犠牲者の名前を挙げていくレイヴン、顔を変えてもそこだけは変わらない黒い瞳が異常性癖の喜悦に底光る。
「依怙贔屓はしたくない。仲間外れは可哀想だろう。君には全員と友達になってもらう」
スティーブ、スチュアート、レオナルド、アンドリュー、ダニエル、イーサン、ニコラス、ケビン……
混乱の極みの脳内で、初耳も含めた複数の人名がぐるぐると渦を巻く。
ベッドを取り囲む画架の上に並んだ犠牲者の形見、根が付いたままの子供の銀歯と純銀のライターとナイフ……
まさか。
「決められないなら僕が選ぼう」
ルーレットを回すようにレイヴンの人さし指が順繰りに巡り、スワローの顔のすぐ横の銀歯を指名する。
「スティーブからだ」
「ダチなんかいらねえ」
「いい加減お兄さん離れしないと」
「それはダチじゃねえし、ダチになりたかねえし、ダチだっていうお前は狂ってる」
勝手に声が上擦り震えが広がる。
レイヴンが指先に銀歯を摘まみ、タンクトップを捲り上げられ、裸身をさらすスワローの腹の上で転がす。
固くヒヤリとしたエナメルの質感……へその窪みに嵌まり、恥骨を転がり、残る乳首を押し潰す。
「っく、」
レイヴン・ノーネームの犯行の特徴。
犠牲者が身に付ける光り物を奪い取る。
どこの誰とも知らない犠牲者の銀歯が、スワローを犯し、嬲り、辱める。
乳首を執拗に虐め、揉み転がし、青ざめた皮膚が覆う首筋を遡って顎の先端へ至る。
「スティーブがキスしたがってる」
「…………」
「キスしてあげて」
冗談じゃねえ。
キツく唇を引き結んでおもいきり顔を背ける、抵抗虚しく前髪を掴まれ固定され唇に銀歯を押し付けられる、ぐいぐいと力を込めて押し込まれる。
唇がひしゃげ顔が歪む、それを見たレイヴンが笑い小鳥の啄み方をまねて銀歯をじゃれつかせる。
罵ろうと口を開けばすかさず押し込まれる、それだけはいやだ。
「スティーブが中に入りたがってるよ、入れてあげて」
胃が固くしこって嘔吐感が膨れ上がる。
喉へと不快感のかたまりが這い上がる。
畜生ぶっ殺してやる。今唇に押し付けられてるのは犠牲者の歯で……死体の歯……生きたまま引っこ抜いた?
想像力を呪う。限界だ。
咄嗟に横を向き盛大に吐瀉する、酸っぱい胃液と一緒に胃の内容物をぶちまける。仰向けのまま吐いていたら吐瀉物が喉に詰まって窒息していた。
目鼻から粘つく体液が滲んでくるのがたまらなく気持ち悪い。
「キスなんてただの挨拶がわりじゃないか、なにも吐かなくていいだろうに失礼だな……スティーブが落ち込んでるよ。シーツも汚しちゃって、どうしようもない子だ」
激しくせき込む。吐き気はまだやまない。吐くのなんて何年ぶりだよ?数年前に風邪にかかって高熱を出して以来か、スワロー自身が一番その事実に戸惑っている。服も髪も汚しちまった。洗濯が面倒だ、モッズコートと一緒にピジョンに洗わせるか。
朦朧と霞がかった頭でぼんやりそんなことを考える。
「別に、どうってことねえ」
虚ろな目でうわごとを口走る。
「?」
「死体だか生きてるガキだかから引っこ抜いた歯を食わされたって、ファーストキスじゃねえし、全然別にどってことねえ」
俺は違う、アイツとは違う、ずっとタフにできてる。
ずぶとくしぶとくしたたかに、殺人鬼に監禁されたくらいじゃへこたれねえ、この程度で胃袋がびっくりして吐いたりもしねえ。これは全部コイツの油断を誘う嘘っぱちの芝居、全部デタラメだ。
『別にどうってことない』
『全然たいしたことじゃない』
頭蓋の裏側に兄の強がりが撓んで反響する。
吐瀉物に顔中汚して必死に自分に言い聞かせる、自分自身にくどいほど言い聞かせて惨めな現実をねじ伏せる、悪意に満ち満ちた世界を敵に回して全否定する。
ビビってねぇ。ブルってねぇ。このとーりぴんしゃんしてる、すげーぞさすが俺様。
吐瀉物に塗れたスワローの独り言はどうでもよさそうに放置し、レイヴンが服で銀歯を拭いて浄める。
服で入念に磨き立て滑らかな光沢を増した銀歯を満足げに眺め、レイヴンが動きだす。
スワローのズボンに手をかけ下着ごとずりおろし、華奢な脚を掴んで割り開く。
「テメェ待っ、オイこらふざけっ」
「そっちの口じゃキスできないね」
「そこは口じゃねーぞケツの穴だ!!」
剥き出しの脚にヒヤリとした外気と男の手が触れる。下半身を剥かれた無防備さに動揺する。
強姦魔の言動の理解を脳が全力で拒む、全身の肌が粟立って拒絶する。
それでも抵抗できない、両手を戒めた手錠が身動きを制限し足は体重をかけて押さえこまれている、いくらスワローが強くても成人男性にマウントポジションをとられてはたちうちできない、保険に手錠まで噛ませて用心深いレイヴンはすべて計算ずくだ。
レイヴンがポケットから小瓶を取り出し蓋を開ける。手のひらの上で逆さにし透明な液体を塗り広げる。知ってる、母も使うローションだ。
片頬が歪に引き攣って、絶望に半ば魂を売り渡した乾いた笑いがでる。
「ローションの半分は強姦魔のやさしさでできてるなんて信じねーぞ」
「血は一度付くとなかなか落ちないんだ。スティーブを汚したくない」
スワローの体を案じての事じゃない、むしろスワローなどどうなってもいい。
レイヴンが友達として心を許すのは物言わぬ冷たい形見だけ、友達が気持ちよく遊べるなら手間暇惜しまない。潤滑剤に濡れ光る手がスワローからは見えない窄まりに潜り込み、排泄の用しか足してない孔に問答無用で指を立てる。
肛門に凄まじい圧迫感。生まれて初めて他人の手に触れられ、閉じた孔を指で抉られ、どうしようもなく間違ってるという理屈じゃない感覚に落雷のように打たれる。
「いっ、あが、くそっ、たれ」
「ずいぶん遊んでるのかと思ったけど締め付けがキツい。ヴァージンって本当かい?」
「指、どけ、離れろ」
頭が回らない。舌が突っ張って麻痺する。
粘着質の潤滑剤に塗れた指が固く縫い閉じられた孔の縁をあやしくなぞり、皮膚の下を毛虫が蠢くような悪寒が這い上る。
勢いつけて蹴りどうかそうにも下敷きにされては不可能、罵りたくても言葉が出ない。うっかり口を開けば違う声が出てしまいそうで罵詈雑言が迷子になる。潤滑剤が足される。窄まりを伝って会陰へと滴る粘液のあまりの気持ち悪さに仰け反り、震える。
「っぐ……いい加減そのド汚ェ指を抜けよ、|ケツの穴野郎《アスホール》……」
再び嘔吐感が襲うも辛うじて喉元で塞き止め、だらだらと会陰を伝ってペニスを濡れそぼらすローションの気色悪さを我慢し、嗚咽とも喘ぎとも判じかねる震え声で罵る。
ヒューヒューと呼気が枯れ、膨れ上がる一方の生理的な嫌悪にしどけなく髪が貼り付く双眸が潤む。
浅ましくひくつく孔に丁寧にローションを塗される。
淫らに立つ水音が凄まじい恥辱を煽る。
皺一つ一つ襞一つ一つを暴かれ、本来出すべき場所に異物をねじこまれる違和感が背徳感と融合して肌をざわつかせる。
男の指がいやらしく蠢き、丹念に襞をかきわけ、じっくりと圧をかけて銀歯を挿入していく。
「スティーブが入っていくよ。ゆっくりじわじわと君のお尻の中に入っていくよ」
スワローには見えない。見えなくともわかる。男の指に押された銀歯が狭い孔をこじ開け、窄まりをかいくぐり、肉の隧道へもぐっていく。
「いぎっ……あッ、が……」
奥歯を強く噛んで絶叫を殺す。
余裕なんて全くない。小さい銀歯が僅かな隙間にめりこみ、入口付近の浅い場所でコリコリ転がる。しこりに似た違和感が生じ、意志を裏切って体がでたらめに跳ねる。
「君の中はとっても温かくて気持ちいいってスティーブが悦んでる、すごく気に入ったみたいだ。ずっとここにいたいって」
「ぬけ………指、あぐ……」
唇に押しつけられただけでも無理だった。
さんざん自分の上を転がりまわった銀歯が、裸のすみずみまで辱めた歯が尻の孔を出たり入ったりぬちゃぬちゃかきまわしている。
気が狂ってしまいそうだ。
直腸で温められたローションはすぐに馴染み、薄れ始めた痛みの奥から被虐的な快感が立ち昇る。
「前立腺まで押し込んであげようか。コリコリすると気持ちいいよ」
「………ッ、」
「自分でしたことない?前だけ?スティーブはもっともぐりたがってる、君の全部を知りたがってる。彼はなんでも欲しがる欲張りだから、ゆるしてって君に言わせなきゃ気が済まないんだよ」
入口の浅い場所を引っ掻いていた異物が強引に押し込まれ、直腸がうねってそれを迎え入れる。
奥の一点、自分で触ったことなど勿論なく、存在こそ知識にあっても意識する事などなかったしこりをローリングされる。
「んっ、んんっ、ぐっう」
「ヴァージンをもらってスティーブも悦んでる」
絶望が心を打ち砕く。
喘ぎ声なんて死んでも上げるか。死ぬ気で唇を噛めば鉄錆びた味が広がる、唇が切れて出血する、手が自由なら両手で口を塞ぐのにそれさえも許されない、後ろの刺激に連動してペニスが頭をもたげつつある。
「前が勃ちはじめてる。気持ちいいんだ?」
「よく、ね」
「初めてで勃つなんて才能あるよ。手伝ってあげようか」
レイヴンの手が前に回り、角度と硬度を増しつつあるスワローの分身を掴む。
既にローションに塗れた手で鈴口にぷくりと膨らむ雫を塗り広げ、全体に練り込んでいく。
もう片方の手は相変わらず尻を辱め、後ろと前と同時に責め立てる。
気も狂いそうな圧倒的な快楽。自分でするのとは全然違いコントロールが利かない、ただ一方的に責め立てられ追い上げられていく。
「さわんな変態、っぐ、ぶっ殺すぞ!!ケツん中入ってるクソまみれの歯ァ早く抜け、前いじんな、テメェの妄想ごっこに付き合ってやるほど暇じゃねーぞ!!」
「活きの良さが戻ってきたね、そうこなくっちゃ。もっと楽しませてよ」
「あっ、あっあっあ」
掠れきって情けなく震える声で叫ぶもあっというまに虚勢は散って、腰砕けにへばる。
前に当たるレイヴンの股間がはちきれそうに膨れている。
コイツどうしようもない変態だ。
レイヴンは容赦なくスワローをしごきたてる、鈴口の雫を指ですくいねちゃねちゃと捏ねて竿へ塗こめ、睾丸を手のひら全体で包んで揉みほぐす。
「皮はとっくに剥けてるけどまだ子どもだね、スラリと長くて形がいい。こっちも美人さんだ」
「あっぐあ、あ、ひぐぅ、うあ」
「僕も君くらいの年から体を売ってたんだ。いろいろ教えてもらったよ、どこをどうすれば気持ちよくなるか何をどう使えば連続でイきまくれるか……後ろがコリコリ言ってるのわかるよね、犯されてるのわかるよね、いま前立腺に当たってるよ。前からもドプドプでてくる、ローションなんていらなかったな、自前の汁で十分だ」
前と後ろを同時に嬲られ体がぐずぐずに蕩けていく、尻に突っ込まれた指がぐちゃぐちゃ乱暴に抜き差し前立腺をしごきたてる、デコボコした歯の表面が襞を引っ掻く快感に自然と腰が上擦り小刻みにしゃくりあげる。
「あっあっあっ」
喘いでンのか?
尻に歯ァ咥えこんで前からだらだら汁たらしてわけわからず腰振ってんのか俺は。
「お腹を裏ごしされる気分はどうだい。前からどんどんあふれてくる、ごらんよシーツがぐっしょりだ。そんな声で啼いてると本当に強姦されてる女の子みたいだよ」
「殺す、ぶっ殺してやる……」
「泣きながら凄んでもね」
「んだと?」
「自分が泣いてるの気付いてない?」
こめかみを伝う滴りが耳の孔に吸い込まれていく。スワローは愕然と目を剥く。
そんな表情こそやけに子どもっぽいが、ばらけて纏わり付く前髪の奥で焦点を霞ませた目も、うっすら上気した眦も、半開きの唇から糸引く涎も、わけがわからないくらいのぼせきった顔はどんな倒錯的な凌辱にすらはしたなく乱れ狂う淫売のそれだ。
「せめて声変わりしてから出直しておいで」
レイヴンが鼻で笑い、スワローの引き締まった尻を引き上げ、小瓶を傾けてローションをたらす。冷たいぬめりが足されて、滑りがよくなりすぎた指が奥まで一気に滑走する。
「っひ、はっああ」
駆け抜ける電流に下肢が不規則に痙攣、胃袋がでんぐりがえる。
目をキツく瞑れば思い出したくもない兄貴と母さんの顔が闇に錯綜する、ふざけんな今出てくンな引っ込めくそったれ、こんな変態的なプレイで感じるかよ、変態がひとりで悦ってるだけ……
「――――――――――――ッあああああ!!」
体奥の一点で衝撃が爆発、視界が白く染まる。
後ろの指が鉤字に曲がって肉襞を押し、前の手が汁だくのペニスを擦り下ろした瞬間に大量の白濁を放っていた。
今まで体験した事ない未知の感覚、他人の手で無理矢理追い上げられイかされた屈辱……一瞬硬直した体がぐったり弛緩、ぱくつく襞の奥に突っ込まれた異物が頭をだす。
括約筋が不規則に収縮、赤く充血した肛門から生み出された異物が、ローションと腸液の混じったぬめりの糸引きシーツに落ちる。
「おかえりスティーブ」
「はっ、はっ、はっ……げえっ」
痛い。気持ち悪い。全身汗やら体液やらに塗れてぐしょ濡れだ。
レイヴンが拾い上げた銀歯に声をかけ、シーツの裾で丁寧に拭く。自分の体内から排出された異物を見て、空っぽの胃から胃液の残りを少し吐く。
股間のペニスはすっかり萎えきっている。ひどく消耗して瞬きするのも億劫だ。最悪のバックヴァージン喪失……腹の奥を犯す邪悪な歯の感触は一生忘れられない、この先ずっと悪夢にうなされるだろう。
もっとも生きていればの話だが。
「次はレオナルドだ」
耳を疑う。
レイヴンが無造作に手を伸ばしてナイフをとり、固く冷たい柄の部分を、たった今異物を排泄したばかりで弛んだ肛門へぐっと押しあてる。
「君と友達になりたい子が列を作って待ってるんだ。最後は全員同時にイくから失神しないでくれよ」
ともだちにシェアしよう!