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7月5日 水曜日に初めて電話する
ワンコール、ツーコール、スリーコール・・・・・・。
『はい。』
「あ、あの!お疲れさまです。えっと・・・鈴原です。」
『すずはら?』
「あ、えと、ひろとくんの、その・・・担任の、」
そう言うと電話越しにガタガタと物凄い音が聞こえた。
「あの、大丈夫ですか?」
『へ、平気です。すみません。えっと・・・・・・尚弥、先生ですか?』
「は、はい。そうです。」
『うわー、すみません。いつも尚弥先生だったので。』
子供たちがずっと名前で呼んでるし、名札もうちの園では下の名前でつけてるから、名字を知られてないのはよくある話で、別に構わないんだけど。
『それより、電話をくれたってことは食事がOKってことですか?』
「・・・・・・はい。聞きたいこともありまして。」
小泉さんって、電話越しに声を聞くと低めでゆったりとした口調で俺の一番好きな声。
耳から入る声に心臓がドキドキと煩い。
『先生ってお住いはどちらですか?』
「へっ?あ、えと、○✗町です。」
『そうなんですね。うちも近くなので、それじゃあ、△□駅に18時でどうですか?』
「は、はい。大丈夫です。」
『ふふ、ありがとうございます。楽しみにしてますね、それじゃまた後で。』
「はい、また後で。」
通話を切るとずっと緊張していたせいか、ぷつっと糸が切れたかのようにソファへなだれ込む。
うわぁぁぁぁ、どうしよ、約束しちゃったよ。
年上で爽やかで優しくて子供好きで声も顔も俺好み。
じゃなくて!!小泉さんは在園児の保護者だからダメなんだってば。
気が緩むと最近そーゆう恋愛ごとに、縁がなかったせいで思考がそっちに持って行かれてしまう。
約束の時間までに洗濯やらシャワーやらを済ませた。
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