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大好きだから 6

「さて、家に入ろう」  無言で宮坂の背中を見送っている藤田に声をかけた。 「あ、そうだね」  少し驚いたように藤田が振り返った。  家の中に入ると、居間に居た母親と少し話をしてから、自分の部屋に藤田を連れて行った。  「わ、あぶな……」   部屋に入った途端、藤田が抱きついてきたので、俺はバランスを崩してしまった。 「あ、ごめん、ごめん……」  藤田の顔を見ると、少し悲しそうな表情をしていた。 「馨、どうした?」  俺が聞くと、藤田がちょっと口を尖らせてから下を向いた。 「なぁ、マキ、抱きしめて」 「え? あぁ……ちょっと荷物置かせてよ」  いつもと様子が違う藤田に少し戸惑いながら、俺は荷物を置き、カーペットの上に腰をおろした。 「はい。おいで馨」  俺は両手を広げて藤田を見た。珍しく自分が藤田をリードしているようで、ちょっと嬉しかった。 藤田は俺の腕の中に入り込んでくると、俺の胸に顔を押し付けた。 「どうかしたの?」 「ん? ホッとしてさ」  藤田がそう言ってから顔を上げ、ニッコリ笑った。 「え?」 「宮坂さん」 「あぁ……」 「牧野を取られるなんて、あるわけないと思っていたけど、やっぱり心配だったから」  藤田はそう言って俺の身体に腕を回し、ギュッと抱きしめた。 「ごめんな。心配させて」  俺がそう言うと藤田がため息をついた。 「ホントだよ......」  俺の胸にもう一度顔を埋めて藤田が呟いた。そんなに心配してたんだ? 「ゴメン。俺、馨がいるだけで幸せなんだよ」 「ホント? 俺もだよ! マキちゃん」  俺は、顔を上げて、目を輝かせている藤田の唇にキスをした。  まあ……2人の愛を再確認出来た感じのホワイトデーだったかな。 「なぁ、馨?」 「何?」 「なんて書いたの?」 「え?」 「宮坂にあげた煎餅にさ」 「んー? 良いじゃん。別に」 「気になるよなぁ」 「もう、いいから」  今度は、藤田が俺の唇を塞いできた。まぁ、良いか。幸せならば……。    俺は牧野を守り続けるよ    愛しているから    永遠に…… 「大好きだよ、牧野」 「大好きだよ、馨」  二人でおでこをくっ付けて、囁きあった。 「おいおい……それはダメだってば」 「いいじゃん、手でさぁ……」 「ダメだって。我慢出来なくなるから……」  そう言って俺が藤田の手を押さえると、藤田は「へー。そうなんだ?」と言って、いたずらっ子のような顔をして笑った。 おわり

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