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第12話
アレンシカとエイリークとルジェの三人で何とか真っ白のルジェのプリントを自分達のプリントを仕上げてると、一番最後にゴールすることになってしまった。
プリムは最初こそただ見ているだけだったが、ルジェに注意されるとぶつくさと文句を言いながら、指示を貰いやっと書き上げた。
当然ゴールの教師にも心配されて、その後組それぞれで作る夕食も他の組とは大きく遅れてしまった。
エイリークが料理が得意だったから早く準備することが出来たが、結局食事にありつけたのは他の組が食べ終えて片付けをし始める頃だった。
夜はキャンプファイヤーを焚いて、生徒達が周りに集まる。
ここで気になる相手がいる人は二人きりになったり、ちらちら目配せしてし合ってはどちらから誘ったらいいか分からない人もいる。
ついつられてアレンシカはウィンノルがどこにいるのかキョロキョロと探していると、後ろの方で何人かと火を眺めながら談笑している姿が見えた。
婚約者なのに、こんなロマンチックな火の前でも一緒にいることは出来ないのだと打ちひしがれる。
結果なんていつも分かりきっていることだ。どんなに望んでもその通りにはならない。あの時側にいてくれた彼は今は別の人に寄り添っている。
(何で分かっていたのに、見たんだろう。僕は。)
「アーレーンーさーま!」
「わ!」
突然目の前に真っ白いものが現れた。あまりに近かったので一歩後ろに下がって見ると巨大なマシュマロだった。
「向こうで先生がマシュマロ配ってました!キャンプファイヤーで焼いて食べていいんですって!すごいですよね!この巨大マシュマロ!」
もうひとつの大きな串刺しのマシュマロを持ったエイリークはアレンシカにはいと渡した。
「アレン様アレン様!一緒に焼きましょう!」
マシュマロを受け取るとエイリークに催促されてキャンプファイヤーの前まで連れ立たれる。
エイリークは思い切りマシュマロを火に突っ込むと勢いよく燃える。
「わー!!焼けすぎました!」
燃え上がるマシュマロをぶんぶん振って消火するエイリークを見てアレンシカは思わず笑ってしまった。
「ちょっと焦げたけど美味しそうだね。」
「こういうものはちょっと焦げたくらいが美味しいって言いますからね!」
そう言いながらちょっとと言うには大分焦げてしまっている巨大マシュマロを食べるエイリーク。
焦げた味が強いのか少ししかめ面をしながらも中身の焦げてない部分に美味しそうにどんどんと食べていく。
せっかくのキャンプなんだから、友達と楽しく過ごそう。アレンシカはエイリークの真似をして思い切りマシュマロを火に突っ込んだ。
喧騒もすっかり消えて、人々が寝静まる。
中には教師の寝ている間にまだカードゲームでもしようと誘いにくる人達もいたが、朝が弱いアレンシカはもう寝ることにした。
先程まではまだまだ名残り惜しそうにしていたエイリークと夜中に起きて何でもないことをただおしゃべりしたりしていたけれど、起きる時間にも限界があった。
遠くでは鳥の声が聞こえて、空には星が瞬いている。
布団に入ったアレンシカは星の光を眺めながら、先程のことを思い返す。
きっと最後までただ一人で火を眺めるだけだったら、今頃この寝に入る瞬間まで悲しい気持ちでいたはずだった。
だけどエイリークと一緒にマシュマロを焼いて、笑いあって、いつの間にか悲しい気持ちはなくなって、楽しいに溢れた。
「おやすみなさい。」
ここには一人なのに何となく一人ではない気持ちになって、誰へとも言えないが誰かへの明確な挨拶をしてアレンシカは眠りについた。
パサリ。バタン。
サクサクサクサクサクサク。
星明りを頼りに暗い夜道を歩く。ただの黒い塊になった木が自分を通り過ぎる。
誰も知らない。見られていない。誰も一緒ではない。ただ一人で歩く。
目指すところはひとつ。高台の綺麗な小屋。
そこにある人。手に入れたいようで手に入れたくはないようで。
これから来るひと時は楽しみなようで、そうじゃない。
だけど待ちわびていたから。
衝動的に出てきて、目指す。
ほんの小さな明かり。星ではないが星と同じ。
待望の光の前に思わず笑みが溢れた。
「どこに行くの?」
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