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第11話
「わあ、小さい滝ですアレン様。」
「ここだけでしか見られない貴重な花もあるんだよ。でも今は時期じゃなかったかな。」
「うーん疲れました。」
「じゃあスタンプ貰ったし行くぞー。」
今日は皆が待っていたキャンプの日。
午前中から一学年みなで移動し、王都からは離れた山に着いた。
ただ今年は王子が在籍しているということで例年と少し異なり、王子だけは警備のしやすい見晴らしの良い高台に一本道しかない小屋で滞在することになったらしい。
王都を離れることになって王子に何かあっては大変だからだ。
ただエイリークはイメージしていたものと違ったようで、「これが…キャンプ……?」と少々驚いていた。
着いてからは事前に決めていた四人組になって各ポイントにいる教師からスタンプを貰いながらゴールに向かうレクリエーションだ。
スタンプだけではなく、このキャンプが終わったら自然について各組でまとめてレポートを提出しなければならない。その為にポイントへの道すがら野鳥や自然の観察もしながら歩かなければならない。
将来は領主になる子達も多く、その土地の自然を観察することはとても大切で、怠けたりふざける者は意外と少ない。
「ふむふむ……植物は同じなのに向こうと違う色……花には綺麗な蝶々が……あ、アレン様だった。」
「お前ちゃんと書いてる?」
エイリークは花を前にプリントに書き留めながら冗談を言う。
「大丈夫だよルジェ。ほら、エイリはちゃんとしてるから。」
エイリークがプリントを見せると、きちんとびっしり書かれているのが見える。
「…確かに。」
「おまけにキミより字が綺麗デショ。」
「おー……。」
ルジェは自分のプリントをちらりと見るが確かにルジェの方が字が汚かった。
エイリークは心外だったようで、怒っている。
「レポートはチームでやるんだから。ボクがアレン様の足手まといをする訳ないでしょ。」
「エイリは冗談が好きで、とっても真面目なんだよ。」
「いや……。」
ルジェはとエイリークとアレンシカを交互に見ると、ひとつため息をついてから歩き出す。
「……まあ、さっさと行きましょう。」
ルジェに続くようにアレンシカが歩く、その後から更にエイリークも歩く。
葉をサクサクと踏みしめる音が静かな森に響くが、その音が少ない。
振り返るとふらふらと一人であらぬ方向に一人で行こうとするプリムが見えた。
「あ。そっちじゃないよ、プリム。」
思わず声をかけるとプリムは何でもないように振り向く。
「そうなんですね。」
「迷子になると危険だよ。出来るだけ離れないでおいで。」
アレンシカはプリムに並んで歩くことにした。
「プリム、そっちは危ないよ。」
「はい。」
「そっちは崖だから危ないよプリム」
「へえ。」
「戻っておいでプリム」
「はあ。」
プリムはどうやら方向感覚に自信がないようで気がつくとあっちにフラフラこっちにフラフラと皆から遠くに離れていってしまう。
その為アレンシカは気が気じゃなく、一時はコースから外れながらも何とか歩いていたが、そんなプリムに痺れをきらしたエイリークが対抗策を講じた。。
「……アレン様大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫だよ。プリムは?」
「あーとりあえずいるから大丈夫だけど……これ……。」
ルジェに繋がった丈夫そうな紐。あまりにもプリムが変な方向に行く回数が多い為に、危険だと思ったエイリークがルジェとプリムをガッチリと勝手に結んだのだ。
あまりに素早く結びしかも解けない為、アレンシカはびっくりした。
「ぷん!アレン様の視線を独り占めするやつはそうなるんだ!」
「解けないです…。」
「ゴール前で解いてあげる!それまではそのままでいてよね!」
「俺巻き込まれてる…。」
「アレン様はボクの面倒お願いしますね!」
「面倒…?」
エイリークはしっかりしているし、どこにも行かないので面倒になってないのにな、とアレンシカは思いながらも森は意外と危ないものだ。二人ずつで見るのもいいかもしれないと考えた。
「まあ、俺が一番力あるしね、たぶん。ミラーくらいは抑えられるし。」
と戸惑いながらもルジェは快諾してくれたが、後ろからプリムを見張ることにした。
「ま、もうゴール近いから大丈夫。」
「ありがとうルジェ。」
「早く着きたいです…。」
「キミがしっかりしてればもっと早く着いたんだけどね!」
「そうなんですかあ。」
「そういえばゴールしたらプリント確認されるよね。キミ書けたの?」
エイリークはパッとプリムからプリントを取った。
三人はそれに上から下まで見ると目を剥いた。
「ミラーのプリント真っ白じゃん!」
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