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番外編3 レヴェルリーで年越しライブ マーカス1
ジャックとマーカスが付き合って一年弱くらい経った頃の、大晦日のお話です。
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俺は今、非常に緊張している。だって今から、神生類+1に俺が参加して初のライブだから。
ちなみに今日は大晦日。レヴェルリーでは毎年恒例の、その年にライブをよくした人気バンドとDJが出演する、年越しライブパーティーが開催されている。
夜の七時から朝の六時まで行われ、全部で十のバンドやユニットが出演。一つのバンドが終わればDJが入る。
一バンドの演奏時間は二十分ほど。DJは五人で四十分ずつ二回まわす。DJ中にバンドの片付けとセッティングをするので、待ち時間なく楽しめるってわけ。
今年の神生類は意欲的にライブをこなし、着実にファンを増やしていった。
だから、レヴェルリーの年越しライブに参加するという栄誉を勝ち取ったんだ。
けど俺はいきなり年越しライブに参加。そりゃ緊張もするよな?!
神生類+1は若手ユニットなので、バンドの中では一番初めに演る事になっている。
まずオープニングDJが一時間まわし、八時から俺たちのライブだ。今日は二十分と時間が短い為、演奏するのは四曲。
さぁ!神生類+1の始まりだ。
一曲目は、お馴染みのインストゥルメンタルな曲。神生類の代表曲の一つだ。カグラが作ったリズムトラックに、カグラのキーボードとショウの爆音ギターがしのぎを削る。麗しい双子のステージ上での戦いは、見る者を充分に魅了する。
そして二曲目からは俺のドラムが入る。カグラが作ったオケとクリック(メトロノーム)をイヤモニ(イヤーモニター)で聞きながら、同期演奏していく。
カグラは、俺のドラムとショウの爆音ギターの音をイコライザーで調節しつつ、マイクを握った。澄んだ魅惑の歌声がドラムとギターの爆音に負けず響き渡る・・・
そこからは二人に付いて行くのに必死だったが・・とてつもなく楽しかった。
何と言うか・・やっぱりこいつらすげぇわ。流石ジュンさん、いや、ジュン様の孫でカイさんの子どもだわ・・・カリスマ性が桁違い。ライブだとそれがいっそう際立つ。俺が全力を出しても、何とか見劣りしないよう食らいつくのが精一杯。
俺は無我夢中で三曲叩ききり、神生類+1のライブは終わった。
カグラとショウが俺の所に来てハイタッチする。
あ~やりきったよ俺っ!!!
観客の反応も上々だった。良かった・・「神生類に生ドラムなんていらねぇ」的な野次も覚悟してたのにな。
俺らの次のDJがかける曲を聞きながら後片付けをしていると、照明を切ったステージ前にジャックとルイが来た。
「おつかれ、マーカス。すごい良かった。カッコ良すぎてヤバいよ。」
うぉっ?!ジャックに褒められたっ!!
何これ?めちゃくちゃ嬉しいんだけどっ!!
「本当に良かったですよ。マサカズ先輩。ショウもカグラもお疲れ様!ドラム入れて大正解だね。」
ルイがショウにタオルを渡す。いいねぇ、美人マネージャーって感じだよ。
「ふぅ~、マサカズ先輩本当にありがとうございます。神生類の一つの形が見えました。」
珍しくカグラに真面目にお礼を言われたので、俺もきちんと自分の思いを話す。
カグラは普段はびっくりするくらい破天荒な性格をしているんだが、音楽に関してはものすごく真面目だ。普段のショウとカグラの関係が入れ替わってる感じ。
「あぁ。誘ってくれてありがとうな。俺も本当に楽しかったし満足してる。けど、神生類はカグラとショウのユニットだ。俺がすべての曲のドラムを叩くのは何か違うと思うし、カグラは自分で作ったリズムトラックをもっと信用するべき。あれは普通の感性じゃ作れねぇから。まぁ、普段のライブなら生ドラムを入れるのは五曲が限度だろ。それ以上は神生類の世界観が崩れる。
俺はあくまでサポートメンバーだからな。」
「・・はい、分かってます。けど、本当にマサカズ先輩の生ドラムが入った神生類は、一つの到達点だと思うんです。」
「そう、一つのな。けど、神生類の魅力は一つだけじゃねぇよな?インストゥルメンタルな曲も、ショウの限界までかき鳴らす爆音ギターソロも、カグラの綺麗なアカペラも、突拍子もないリズムトラックも、二人が張り合った演奏も・・言い切れないほど色々あるぞ?俺は神生類のファンでもあるからな。」
うんうん。俺いい事言ってんじゃねぇ?
だが、カグラと真面目な話をしている俺の横で、ショウはルイに汗を拭いてもらいながらイチャコラしてやがった・・・
そしてそれを見たジャックが俺の耳元で囁く。
「オレはタオルで拭くより、マーカスの汗を舐めとりたいな・・・もう今すぐ連れて帰ってそうしたいくらい。」
ヤメテクダサイ・・・
俺はこの後、他のバンドやDJを楽しむんだからっ!!
カウントダウンはジュン様のソロ、JUNなんだぜっ?!
で、朝まで遊んで初日の出を見るんだよっ!!
ジャックと一緒にな。
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