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第3話 気づいたら時間がもうないってよくあるよね
翌朝。今日は月曜日。殆どの人にとっては憂鬱に感じてしまう日。かくいう僕も正直少しだけそう感じてしまう。
だが今朝は普段にもまして強くそう感じてしまう。何故なら昨日の出来事が頭から離れず、遠藤君に何を言えばいいのか考えていたんだけど、いつの間にか眠っていたみたいで気づいたら朝になってだんだよね。
びっくりしたよ。考え事をしてたのにいつの間にか朝になってたんだから。経験がないけど宿題とか課題をせずに翌朝になって焦るのってこういう感覚なのかな?いやちょっと違うのかな?
まぁ、そんな事は別にいいんだよね。だってもう学校が僕の目の前にあるから。はぁ、響君と顔を合わせるまであと数分。
そんな気が重くなってる僕に
「はよう!空。なぁなぁ、今年行くのはどっちがいい?」
声をかけて来た人がいる。それは中学からずっと同じクラスだった。僕の友達だ。少しおバカだけど根っからのいい人だ。
「おはよう海斗。どっちに行くってなんのこと?選択肢を出してくれないと答えられないよ」
いきなりどっちが良いとか言われても何の話か分からないからね。
「………えっ?」
何だか信じられないみたいな目で見られてる気がする。あれ?何で僕が変なこと言ったみたいになってるんだろ。
「あー、そっかそうだよな。えっと今年の夏は海と山どっちに行く?」
「えっ、いきなりだね。」
山と海か。うーん。やっぱり夏といえば涼みたいし、海かな?でも大自然に触れる山っていう選択肢もありかな。
「うーん」
「なぁなぁ、どっちにする」
悩ましいなぁ。よし逆に考えてみよう。海だと日焼けとか砂が肌につくから後が少し面倒だし、山かな?でも山は登るのが大変だしなぁ。
あーだめだ。結局どっち選べないよー。なんかちょうど良い中間点とかないかな。涼しくてそこまで大変じゃない場所。
………あっ、そうだ!ちょうどいいところがあったじゃん!
「決まったよ!」
「お、それで何に決めたんだ?」
「うん。僕が選んだのは川だよ」
「………え?いやちょっと待った。いや空さんや、第3の選択肢出さないでくれよ!海か山どっちかを選んでくれよ!それか両方をとってくれよ!」
「え、それも第3の選択肢じゃないの?」
海か山かの2択だったのにその両方も加えるって事はそれも選択肢になるんじゃないの?
「それはいいんだよ。だって俺の名前って山本海斗だし。寧ろ両方を取らないとだろ!ちょうど夏生まれだしな!」
「え?あっ、そういうこと。」
「そうだぜ!というかこれ中学の頃からの俺の持ちネタだろ?」
「………あっ!」
そう言えばそうだった中1の頃に僕が海斗の名前が山本海斗だから海と山どっちも行くの?的なノリで聞いて、それから海斗は持ちネタとして夏になると毎年使うようになっていたんだった。
「ようやく思い出したのかよ。ったく酷えよな空。毎年やってるのに俺の持ちネタを忘れるなんてよ。」
「ご、ごめんね」
「まぁ、それは別にいんだけどさ」
「いや、いいの?」
「そんな事よりも空お前何かあったのか?」
「?え、どうして?」
なんでそんな事を聞くんだろう。
「どうしても何もお前、さっきから元気ねぇじゃん。」
「え、そうだった?」
あれ?もしかして僕結構あからさまに落ち込んでたのかな?もしそうだったら恥ずかしいなぁ。
「いや俺も気のせいかな?って思ったんだけどさ、そもそもお前がこの時間帯にまだ学校にいないって珍しいしだろ?それに俺の持ちネタに気づかなかったしな。空は今までいっつもすぐに気付いてたのに。というかそもそも忘れてたし。だから何かあるんじゃないかって思ったんだよな。なぁ、空大丈夫か?」
目を見れば分かる。純粋に僕の事を心配してくれてるんだって事が。その気持ちが伝わってきて凄く嬉しい。
………海斗は普段あまり物事を深く考えないのに偶に鋭くなるんだよね。
正直悩みを吐き出して楽になりたい気持ちはあるんだけど誰かに腐男子だっていうのは怖い。揶揄われたりするのも嫌だけど、悪い意味で全く気にされないことにならないか怖い。だから誰にも言えないんだよね。
「うん。大丈夫だよ。気が重いだけでちゃんと何とかできるからね。」
だから僕は嘘をついた。
「そっか。ならよかったわ」
「うん。心配してくれてありがとう」
「おう」
そんな話をしていたら気づくと僕達は教室の前にまで来ていた。
さて今日の僕は憂鬱さからいつもより遅い時間に学校に来た。件の彼はいつも僕より少し早く学校にいる。今日の僕の課題。彼との話し合いは具体的な案は思いついてない。でもほぼ目前にまで来た。この扉を開けたら恐らく彼がいるだろう。はぁ、昨日彼と本屋で会ってから大して時間が経ってないように感じるのに。文句を言っても仕方ないよね。よひ覚悟を決めよう。
そして僕は意気込み、教室の扉を開く。
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