数時間後。冬哉が無理やり引き止めて飲ませた甲斐もあって、全員リビングで雑魚寝する事になり、お酒も入っていたのですぐに寝付いた。 　冬哉は春輝と貴之の間で寝ており──それも秀への嫌がらせの一環だ──秀は春輝の隣で寝てもらった。はずなのだが。 「……んん……？」 　ごそごそと、毛布の中に誰かが入り込んでくる気配がする。まさか、と思って目を開けると案の定秀がいた。 「ちょっと……っ、何で勝手に潜り込んできてるのっ？」 　春輝たちが起きるかもしれないので小声だけれど、秀はやはり表情を変えないまま、冬哉の頬をつねった。滅多にしない秀の「怒っている」のサインに、思わず顔を歪めるとすぐに手は離れる。 　冬哉は慌てて両隣りの春輝と貴之を見た。二人とも今はこちらに背を向けて寝ている。しかしこんな状況を見られる訳にはいかない。 「離れてよっ、僕はもう今日はイチャイチャしないって決めたんだからっ」 　大体こんな状況だし、とまた春輝たちを見る。しかし秀の瞳は真っ直ぐ冬哉を捉えていて、再び頬をつねられた。 「何で？　怒ってるの、こっちだよっ」 「料理、食べてくれなかった」 「それは秀くんが……っ」 　ヒソヒソ声で話すものの、こんな事をしていれば春輝たちを起こすかもしれない。そう思って秀の胸を押すけれど、冬哉の思いとは反対に、秀の顔が近付いた。 「んぅ……っ」 　秀の唇が冬哉の呼吸を奪う。同時に服の上から親指でくにくにと胸の敏感な所を揉まれ、肩が震えた。 　信じられない、この状況でこんな事をするなんて、と抵抗すると、その手は更に冬哉を黙らせようと、服の中に潜り込んでくる。大きくて長い指が冬哉の乳首を探し当てると、そこを指で弾かれヒクヒクと腰が震えた。 「ちょっと……っ、やだ、……やだっ」 　しかしその言葉とは裏腹に、冬哉は下半身に熱が溜まっていくのを感じる。嘘でしょ、と自分の堪え性の無さに愕然とした。けれど秀は愛撫を止めず、それどころか冬哉の股間に手を這わせる。 「……帰った時、ちゃんと謝った」 「……っ」 　ズボンの上から爪で先端を引っ掻かれ、腰が引けた。確かに謝られたけれど、それでは腹の虫がおさまらなかった冬哉が原因で、今こんなことになっているのだと自覚させられ、カッと頬が熱くなる。 「ご、ごめんって……だからもう止めて……っ」 「嫌だ」 　普段無口だからか、大人しく見える秀だけれど、こうと決めたら意地でも曲げないところがある。何も今、それを出さなくても良いじゃん、と心の中で文句を言う。言わなかったのは口を唇で塞がれたからで、遠慮なく性感を高めていく秀に、次第に抵抗できなくなっていった。 　はあ、と大きく息を吐いて秀を見上げると、いつもの無表情でじっと冬哉を見ている。その姿が指示を待つ大型犬のようで、不覚にも胸がきゅんっとなった。 「冬哉……」 　静かな声で名前を呼ばれる。冬哉は眉を下げて秀の両頬を手で包んだ。 「……ごめんね？」 「……うん」 　上目遣いで謝ると、秀は頭を撫でてくれた。「嬉しい」のサインに胸の辺りが温かくなる。ふふっと笑うと、秀はその手で耳を触り始めた。 「え、ちょっと？　さすがにしないよ……っ？」 　秀の「えっちしたい」のサインに、冬哉は慌てて耳を弄る手を取ると、彼は唇を耳元に寄せてそっと息を吹き込んでくる。ビクッと肩を震わせた冬哉に、秀は冬哉が静かにしていればバレない、と首に唇を這わせた。 「やだ……っ、ちょっと……秀くんっ」 　せめて部屋を移動しようよ、と言うと、秀は冬哉の手を引いて起き上がる。春輝と貴之に後ろめたさを感じながら、冬哉は秀の後についていった。