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第3話 秀‪✕‬冬哉編3

 二人が入ったのはグランドピアノが置いてある防音室だ。本来こんな事に使うはずじゃないけれど、防音室があって良かったなんて、フルートの練習以外に思う事があるとは、といたたまれなくなる。 「冬哉……」  秀が後ろから抱き締めてきた。彼は背が高いし、冬哉は男性としては背が低いので、秀の顎が丁度冬哉の頭に乗せられるのだ。 「……っ」  冬哉の腰に硬いものが当たる。普段静かなくせに、色事となると積極的になる秀は、それはもう付き合い始めの頃から散々泣かされてきた。しかも秀は、一度火が着いたら何度でもしたいらしく、冬哉が動けなくなるのもしょっちゅうだ。 「は、春輝たちがいるから……加減してよ?」 「…………うん」  返事までに少し間があったことに一抹の不安を抱えつつ、冬哉は秀と向き合った。 (……絶対一回じゃ終わらないよね……春輝たちに気付かれませんよーに)  そう願った冬哉は、秀の口付けを受け入れる。  最初は軽い触れるだけのキス。それから吸ったり、食んだり、舐めたりして、お互いを高めていった。 「ん……」  息継ぎのついでに出た声が甘くて、自分でも恥ずかしくなる。そうなると、秀はいつも決まって冬哉の耳を舐めるのだ。 「んっ! やっ……」 「可愛い冬哉……」  びくりと身体を震わせると、耳輪を甘噛みされ、秀の腕を思わず掴んでしまう。直に聞こえる秀の息遣いが弾んでいて、冬哉はゾクゾクして腰をうねらせた。 「し、秀くん……体勢、辛くない……?」  秀は冬哉に合わせてずっと前かがみになっているので、この体勢じゃ辛いだろうと、床に座ることを提案する。 「……床、冷たいから……」  そう言った秀に再び耳を舐められ、冬哉はグッと息を詰めた。フローリングだし、そりゃそうだよね、と思い直して、せめて暖房をつけようと言う。  すると秀は冬哉がエアコンのスイッチを押すのを黙って見守り、電源を入れた途端また愛撫を再開した。 「あ……っ、ちょっと、秀くんっ、……んんっ」  冷たい秀の手が服の中に入ってきて、冬哉は堪らず身体を引く。しかし秀はスイッチが入ってしまったらしく、聞く耳を持たない。  そのまま壁際まで追い詰められ、ひんやりした壁が背中につくと、秀の指は冬哉の胸の敏感な所を指で弾いた。 「あん……っ、ん、んん……っ」  耳を口で愛撫されながら乳首をいじられるのは、冬哉が感じやすく、すぐにグズグズになってしまう展開だ。どうやら秀は、加減などしないらしいと気付き、冬哉は堪らず一際高い声をあげる。 「秀くん……手加減、してって……っ、あぁ……っ」  せめて言葉だけでも抵抗しようとそう言うと、耳たぶを噛まれて足の力が抜けそうになる。股間が痛いほど張り詰めてきたので、触って欲しいと思っていると、察したのか秀はそこを撫でてくれる。すると甘い吐息が冬哉の口から零れ、今度こそ足の力が抜けて、ズルズルと座り込んでしまった。 「可愛い……」  一度手を止めた秀は、彼を見上げた冬哉の耳を撫でる。相変わらず無表情だけれど、弾んだ息遣いで秀も興奮している事が分かった。 「秀くん……、手加減してって言ってるのに……」 「してる」 「うそだぁ……」  付き合い始めの頃は二人ともこういう行為が初めてだったので、戸惑いつつ探り探りな部分があったけれど、今は迷うことなく互いの感じる場所に触れ、高め合うことができる。冬哉は秀の服を引っ張り、脱いで、と促した。 「冬哉も」 「ん」  冬哉は立ち上がると、互いの服を全部脱がせる。暖房をつけたとはいえ、まだまだ寒い室内に素っ裸でいるのは何をやってるんだろう、と少し冷静になってしまった。 「うー、寒いー」  冬哉は温めて、と秀の身体に抱きつく。長身な秀の身体は研究者らしく細く、しかし弾力のある肌にドキドキするのと同時に、下腹辺りに当たる彼の熱くて硬いものが、彼の興奮を示していてさらにドキドキした。

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