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第十六章・7

 道は要が、切り開いた。  そうは言っても。 「学費もマンションも、生活費も。何もかも、両親の世話になっているんだ。私は」 「早く一人前になりたい、でしょ?」 「うん。そして、宇実と一緒に、ビジネスをしたいよ」 「ありがとう」  ああ、空が青い。  桜の色に映え、光が明るい。 「ね、宇実。この街にも、海はあるよね」 「うん。郊外に行けば、砂浜もあるらしいよ」 「じゃあ、学校が終わったら海に行こう。この街の海に、挨拶しよう!」 「いいね!」  この街の海は、どんな海だろう。  見知らぬ土地の、初めての海。  二人は、まだ見ぬ未来に向かって進み始めた。  行く先に、何があっても大丈夫。 (私には、宇実がいるから) (僕には、要さんがいるから)  新たな気持ちで心を一つに結び、足取りも軽く走り始めた。

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