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るり 4
「おにいちゃん! いらっしゃいっ」
玄上の背中で埋め尽くされた視界に、白い手がしがみつくように現れる。
「待ってたよ!」
声はまだ若い少年のものだ。
困惑している俺の方へと玄上が振り向くと、その体躯に振り回されるように少年がよたりとこちらに顔を見せた。
年は、翠也とそう変わらないように見えたが、それ以上にその容姿は……
「この子は……」
色素の薄い亜麻色の髪と異常に白い肌、そしてこちらを睨んだ双眸は玻璃の蒼をしていた。
玄上の工房にあったような西洋人形そのままの、俺達とは明らかに違う見た目に思わず見入る。
「なにじろじろ見てんだよ」
「二人とも、まずは挨拶だろう?」
苦笑しながら俺と少年の態度を咎める声に、慌ててこんにちはと挨拶するもじろじろと見過ぎていい印象を持たれなかったらしい。
玄上の後ろからこくりと頷いて返してくるだけだった。
冷たい水が飲みたいと言う玄上の言葉を聞いて、汲んでくると言った彼が出て行くのを見送った後、部屋に座って周りを見ていると盛大に苦笑を零された。
「珍しいか?」
「いや、俺の所も凄かったが……更に酷いな」
辛うじて畳と言う体裁を保っている板のような床を撫でる。
土壁も崩れて中の竹を覗かせている部分もあり、見ているだけで不安感を掻き立てるようだった。
「あの子は……」
「るり、だ」
ふぅと息を吐いて手拭いで汗を拭く。
「るり?」
「俺がつけた」
だからどこにその繊細さがあるのかと聞き返す前に、るりが戻ってきて玄上に縁の欠けた湯飲みを渡した。
玄上ににこにこと笑いかけた後、またその体の陰に隠れるように座ってこちらを警戒している。
「るり、そんな態度を取ってくれるな。こいつは卯太朗だ、話したことがあるだろう?」
言われて頷いたるりは、やっと玄上の陰から顔を見せた。
こじんまりとした小さな顔、その顔立ちも俺達とは違うし、動く度にさらさらと動く金に近い髪は常に俺の視線を奪うには十分な珍しさだ。
「卯太朗、こいつは見ての通りの合 の子でな。もっと小さい時に泥ん中で死にかけてるのを拾った」
「……そうか」
「今はここで 」
言って玄上はるりをひょいと抱え上げて膝の上に乗せた。
ぎょっとしたるりの顔が見えたが、るりも同じような表情をした俺を見たに違いない。
「 男娼をやっている」
言葉と同時にがばりとるりの着物の前を開いた。
「あっ」
「玄上っ⁉︎ 何をっ!」
日本人にはない透けるような質感の肌の上を無骨な手が這う。
「おにいちゃんっ⁉」
「教えて欲しかったんだろ? 男を気持ちよくさせる方法を」
そう言われてぐってと言葉が詰まる。
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