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濡羽と黄金 2

 あれほど求めて手に入れたはずなのに と、羽虫を叩きながらぼんやりと思う。 「  ────羽虫になりたいです」  突然聞こえた翠也の声に飛び上がった。 「そう思うのはおかしいですか?」  日差しを暑そうに見上げ、逃げるようにして菩提樹の影に来て隣に腰を下ろす。 「ど、どうして?」 「え? ……だって、潰されたら、貴男に触れていられるから」  自嘲気味に言い、俺の掌の羽虫の死骸を指で払った。 「でも、死んでしまうよ」  下生えに紛れてわからなくなったそれを追いながら言うと、ひんやりとした指が絡んだ。  無情には虫を弾いた指が、俺の指の隙間にするりと入る。 「でも、貴男に添っていられる」  指先にわずかに力が籠るが、目はこちらを見ない。  ……感受性の高い子なのだろう、あの絵が示す通りの。  俺の気の移ろいを分かるまで行かなくとも、どこかで感じ取っているのかもしれない。  らしくない言動は、きっとそうなのだろう。    経験のない、持て余した感情の昇華の仕方を見つけられないその姿は、いじましく思うも酷く被虐的だ。  愛しいと思うと同時に、苛めたくもなる。     「  虫に、こんなことをしないよ」  絡む指を舐めた舌に残る……塩辛さ。  心が飢えるほど甘いと思った味なのに、どこか苦い。  けれど、蠱惑的に香る。 「体は?」  囁くように尋ねると、彼はほっとした表情をしてから恥ずかしそうに視線を下げた。 「お薬が効いたのかすっかり」 「そう、すっかりいいんだね?」  強く確認する俺に翠也はふるりと身を震わせる。  万が一にも人の目に映らないように、陰になって見えにくい位置から翠也の腰に手をやった。  こんな場所で……と抵抗してくるかと思ったけれど、わずかに体を跳ねさせただけで止めようとはしない。  逆に俺が触りやすいようにと体をずらしてくれて……  木漏れ日に斑に染まる着物の端から指先を忍ばせ、つぃと肌を撫でる。 「ぁ……」  思わず声を漏らした翠也は、更に手を入れて前の膨らみを触ろうとする俺を止めなかった。  晩夏の日差しの中で彼の肌が赤く染まっていくのがはっきりと見える。  野外で触れられる羞恥に耐えようとする姿に、悪戯心がざわざわと這い出してきてしまう。  適度に堪能して止めようと思っていた指の先の膨らみはすっかり大きさも硬さも申し分なくなり、ぎゅっと下生えを握り締める手が、翠也が徐々に追い詰められているのだと教えてくる。 「このまま、ここで出してみるかい?」 「え……えぇ⁉」  快楽を享受してとろりとしていた目がはっと開かれ、自分の状況を省みる。  

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