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真新しい画布 8
暑苦しさにもがく。
「ぁ、……っ重っ!」
反射的に突っぱねると、抵抗するかのようにその重苦しさは再び覆い被さってくる。
「な、なんだ!?」
はっきりしない頭で目を開けると、男らしい相貌をにやりと歪めた玄上の顔が間近にあった。
目が合うと、唾液を纏った舌がべろりと頬を舐める。
「よぉ!」
短い挨拶と尻を撫でる手にはっと我に返った。
「なっ……何やってんだよ! 退けっ」
慌てて渾身の力を込めて押し退けると、するりと朝立ちで膨らんだ股間を撫でてからあっさりと体を起こす。
「いやぁ、お誂え向きに呑気に寝てたもんだから」
「お前はっ! 友人の寝込みを襲うのかっ!?」
「卯太朗だけだ」
はは と豪快に笑うと、「起きたぞ」とるりに声をかける。
「ごめんよ……卯太朗のご飯、おにいちゃんが食っちまったんだ」
寝起きに目まぐるしくことが起こりすぎたせいか、るりの言葉に呻いて頷くしかできない。
「あとで何か奢ってやるから」
「 あぁ」
外を確認するが、日はまだ高くない。
「お前はこんな時間からるりのところに来るのか?」
「気分でな」
嫌味のつもりで言ったが、平然と返されて言葉を続けることができなくなった。
「泊まるくらいにははまっているのか?」
ぼんやりしていたところに言われて、「あ?」と返す。
「相変わらず寝起きが悪いな」
「……そんなことはない」
言って体を伸ばし、枕元に畳まれてあった服を身につける。
服を着ながら、これからどうしたものかと溜息を吐いた。
「どうした? 気怠い雰囲気のお前もいいよなぁ」
「お前はちょっと自重しろ」
睨んでやると、少し鋭利になったような顎を擦って苦笑を零す。
「痩せたか?」
「おー。個展の追い込みだからな」
そんなこともいっていたなと、記憶を探って思い出した。
男柄そのままの顔や体もやや草臥れているのか、いつもの精彩を欠いているように見える。
「夫人との時間を少し抑えればいいんじゃないか?」
「はは! そうだな」
呑気なものだと睨んでからるりを見遣ると、俺達二人のやり取りに飽きたのか何やら懸命に腕を動かしているようだった。
何をしているのかと覗くと、以前に与えた写生帳に一生懸命に何かを描きつけている。
ただの思いつきで渡したものだったが、それをるりが活用してくれているのだと思うと嬉しい気持ちになった。
「あれを渡したのはお前だろう、卯太朗」
「ん? 別にいいだろ」
苦い物言いに肩をすくめる。
馴染みの男娼が他所の男からの物をもらって不愉快なのだろうか?
紙の束一つで悋気なんて玄上からは想像できなかった。
「るり、何を描いてるんだ?」
「うん?」
そぞろに返事をしながら顔を上げないるりの手元を覗き込む。
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