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第13話 変態ドM眼鏡野郎と世話係
私はお仕置き場所と言うには相応しくない、明るく心地良い温室に連れて来られ、思わず辺りを見回した。
様々な草木が植えてある所を見ると、オコト様たちが管理する研究室なのかもしれない。……変な薬もここで作られていたりするのだろうか?
「リュート、そこから動かないこと。じゃ、トルン、あとは任せたわ」
オコト様はそう言って、温室を出ていかれた。待って、こいつと二人ってだけで嫌な予感しかしないんだが。
「んふふふふ。ああ、初の実験がリュートでできるなんて興奮するねぇ」
──今実験って言いました!?
私が戦々恐々としていると、ずる、ずる、と何かが這う音がする。
「多分お腹が空いているだろうから、たっぷり可愛がってもらえるよぉ~」
そう言ってトルンは眼鏡を不気味に光らせた。そんな彼の後ろには、赤黒いグロテスクな見た目の、モンスターがいる。何と言うか、タコみたいな、豚みたいな……とにかく見た目は最悪だ。
「吾輩が作り上げた最高の生きたおもちゃだよ! 満足するまで精液を吸い続けるんだ! 愉しそうだろう!?」
体温調節ができないからここで飼育してるんだ、HAHAHAHA! とトルンは素早い動きでその場を去っていく。お仕置きって、コイツの相手をさせられることなのか!? さすがにこの見た目は私も気持ち悪いです! なんか全体的にベトベトしてて、手のような触手のようなものがたくさん生えていて、身体の肉に埋もれるようにして付いている一つ目が、生理的な不快感を増幅させてますし!
私はその場から逃げようと一歩、後ずさりした。しかし既に私の足はヤツの触手に捉えられていて、嘘だろ!? と思わず叫ぶ。
バランスを崩して床に転がると、捕らわれた足を引っ張られ、ズルズルとモンスターに引き寄せられる。赤黒い触手は謎の粘液をまとわせながら、私の服を器用に脱がせていった。それはもう、丁寧にボタンを外して。
「うう、気持ち悪い……」
ねっとりと身体を這う触手。両手首と両足を奴に縛り上げられ、転がっていた身体を起こされ立たされた。
生温かい触手がお腹、背中、太腿を撫でる。それと同時に、ヒトの舌のように形を変えた触手が、私の唇をちろ、と撫でた。
「……っ」
まるで開けろ、と言わんばかりの動きに、私は抵抗して口を噤む。その間にパンツの紐がほどけられ、下半身が膝あたりまで露になってしまった。それでも口元の触手はしつこくちろちろと唇を撫でていて、私は声を上げることもできない。
すると、上半身の服を開けた触手がお腹を這い、私の胸を撫で始める。乳首を掠めて思わずグッと息を詰めると、心得たようにそこを執拗に撫で、押し潰し、更には唇のように変化して吸い上げてきた。
「……っ!」
びく、と肩が震える。それでも私が抵抗を続けていると、緩やかに持ち上がっていた私の雄に、また別の触手がまとわりついてきた。粘液を付け、ヌルヌルになったそこを、変化した触手が包んでいく。温かくヌルっとした感触に、さすがに私は耐えきれず口を開けて息を吐き出すと、待っていましたとばかりに唇を撫でていた触手が口内に入ってきた。
「んーっ!」
とんでもないお仕置きだ、と私は心の中でできる限りの悪態をつく。これなら、本当に物理的に首が飛んだ方がマシだった、と。
そこからはもう、なにがなんだか分からなかった。耳をくすぐられ、口の中を掻き回され、胸も私の男の象徴も、好きなようにされる。膝が笑って立っていられない程だけれど、手と足を拘束した触手が、私が横になることを許してくれない。
「……っ! ──ッ!!」
私を咥えこんだ触手が、私をどこまでも奥へ奥へと吸い込もうとしてくる。粘膜に包まれたような感触は、女性のそれとはまた違って、意識ごと持っていかれそうな感覚に視界が霞む。
やがて覚えのある感覚に襲われ私の腰は引けた。けれど触手は私の腰に絡みつき、前後に押してくる。早く出せと声が聞こえたような気がして、私はギュッと目を閉じた。それと同時に口が解放され、私は声を上げる。
「ク……ッ! ああ……っ!」
全身を大きく痙攣させて、私はイッてしまった。ジュルジュルと私の肉棒を咥えていた触手は音を立て、私が今放った熱を吸っている。
「……っ! ううっ!」
しかしそれだけでは終わらないようだ。またヤツの触手に腰を動かされ、もっと、もっとと再び蹂躙が始まる。
「待て……っ、もうこれ以上は……っ」
一度達して敏感になった身体は、ぬめった触手がひと撫でしただけで強い快感が背筋を走る。私は力が入らない手足を必死にばたつかせ、どうにか逃げられないか試みるものの、失敗に終わった。それどころか、私のまだ萎えない肉棒を咥えこんだ触手が、また扱くように動き出し前かがみに──気持ち的には。手足を拘束されていたのでできなかったけれど──なり、歯を食いしばった、その時。
「止めろ」
高めだけれど、凛として強い声が背後から聞こえた。残念ながら後ろを振り向くことはできなかったけれど、聞き覚えのある声……ショウ様だ。
「……っ、ショウ、さま……?」
どうしてここに、と問おうとして私は息を飲む。
ショウ様は、私が声を掛けるのも躊躇うほど、鋭い視線で触手モンスターを睨んでいたのだ。
私の背筋にぞくりと何かが走る。
それは触手に与えられた快感ではなく、恐怖。ショウ様から発せられる、強力な魔力が私を|戦《おのの》かせたのだ。
「聞こえなかったか? 止めろ。そしてこの人を離せ」
そのひと声で、私は地面に落とされた。立っていられず四つん這いに近い格好で座り込むと、名残惜しむように一本触手が近付く。
「止めろと言ったはずだ。これは僕の……早く去 ね!」
人格が変わったと思う程の声と迫力と佇まい。触手はサッと手(?)を引っ込めると、ズルズルと植物の影に逃げて行った。
「ショウ、さま……」
色々聞きたいことはあったけれど、来て下さらなければ、私は枯れるまで吸い尽くされていただろう。ああ、助けて頂いたお礼を言わなければ。
けれど疲れた身体は休めと言っていて、私は腕の力が抜けて床に横たわる。急激に視界が暗くなり、私は意識を失った。
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