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第1話

 ああ、どうしよう。  目の前には黒い紐が落ちている。  これは事故だから仕方がない。 「沢木。新しいのを用意させる。申し訳ない」  桐生は申し訳なさそうに手に持ったペンチをテーブルに置いた。  返事をしようとして声にはならずに咳き込んだ。 「ごめんなさい」  黒い紐を拾い上げると同時にスマホが着信を知らせて振動する。  ほら……。  ポケットから取り出したスマホには和人の名前が表示されている。  2人はじっとスマホを見ている。  ディスプレイには和人と表示されている。  ため息こぼす。  黒い紐は僕の首に付けられたΩの首輪だ。和人に無理矢理付けられたそれは高性能で、GPSはもちろん、急な体温の上昇や心拍、血圧、睡眠時間まで測れる優れものだ。  無理矢理外すとスマホに通知が来る。  それは僕に届くのではなく、和人に行く。  仕事が終わって桐生を家に送り届けて、帰る予定だったのだが彰に強請られて少しだけと家に上がった。  彰は新しいおもちゃに夢中だ。それは高い位置からボールを転がして落ちていく音が音楽になっていて、仕掛けもあって転がすだけで楽しめる物だった。インテリアにもなっていて桐生が気に入って購入した。大分高さがあり、上部をリビングの拭き抜けになっている階段の柱に固定させていた。  初めのうちは階段に登って上から落としていたのだが、興奮した彰がボールを投げてしまった。ボールは高い位置の仕掛けに引っかかってしまった。どうしようかと考えて見渡すが、葉山は夕飯の支度をしていて、桐生は帰ったばかりでスーツを着替えに行っていた。 「脚立をお借りします」  数段の低い脚立を立ててボールを取ろうと登った。ボールは仕掛けの中に引っかかってしまい簡単には取ることができなった。中を通って転がっていくので、手を中に通さないとボールが取れない。脚立の上に背伸びをした。 「しゃわぁきっ」  下から脚立に登ろうとしていくる彰に驚いて、「彰、危ないですよっ」と声をかける。  仕掛けの中に手を入れていたので、彰をすぐに止めることができなかった。 「ああ、彰っ」

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