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第44話

「僕は大丈夫。発情期とかΩで和人を好きだって、思ったわけじゃない。流されたくなかった。打ってくれてありがとう」  さっきのようにヒートで和人を手に入れたいわけじゃない。  お互いの意識がちゃんとある時がいい。 「和人は? 和人からも匂いがしない」 「俺も打ったから。ラットを引き起こす前に」  和人は自分の首を見せた。そこにはハンコ注射のような赤い点が無数についていた。  そこを指で触れると和人が身を引いた。 「数時間だからね。もうすぐ切れる」 「じゃあ、それまで……」  口にゆっくりと優しく唇が触れる。押し付けるように優しい口づけ。 「ゆっくり……」  何度も優しく触れて目を閉じる。和人の首に手を回して引き寄せる。口に触れていた唇が顎に触れて、首に触れて、まだ痣の残る喉仏に触れる。Tシャツの丸い襟を啄むように引き下げる。鎖骨に触れて、和人の手がTシャツの裾から入ってきて背中を持ち上げるようにしてゆっくりと脱がした。  僕も和人のYシャツのボタンに手をかけた。一つずつ外すのを和人はじっと待ってくれた。Yシャツを脱がせて、その下のアンダーシャツも脱がせた。和人は起き上がって自分でスラックスを脱ぎ捨てた。 「……んっ」  裸の肌に和人の唇が触れて舌が舐あげる。発情期じゃない興奮が身体を支配する。  自分の体温が上がるのが分かる。和人の指が胸に触れる。手のひら全体で撫でるように触る。唇が胸の突起に触れて舌が舐めると、身体が跳ねる。そこを見ると濡れてテラテラと光っていて、和人が視線がぶつかる。その欲情を含んだ熱い瞳を見つめる。見つめあったまま赤い舌が再び突起をゆっくりと舐め上げる。  反対の突起を指がくすぐる。両方をいじられると鼻から抜けるように甘い吐息がこぼれて身を捩る。  和人は胸に付けた唇を離さずにゆっくりと腹の方へと移動させる。臍をくすぐって、パンツのゴムに指をかけてゆっくりと布を下にずらしていく。足を撫でられる。ゆっくりと撫でながら片足ずつパンツを脱がされる。太ももから内腿、膝まで唇が触れて、パンツが抜き取られると持ち上げた足の指先に口付けた。 「きたな……い」 「全部」

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