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第43話
「そんなこと言われてもいつ帰ってくるか分からないし、仕事に行く時間もわからないから僕は待つことしかできなかった」
和人が来なかったらどうなっていたか分からない。あの男たちにどこかに連れ込まれて犯されていたかもしれない。雨で人通りも少なかったから、格好の餌食だろう。
それにあの中にはαがいた。事故はΩのせいにされる。事故を起こせば前科が付く。そうなるとどこにも就職はできないし、日常生活も平穏には過ごすことはできなくなる。そうなると身体を売って生活する底辺のΩに落とされる。
Ωにとって甘くはないのだ。
僕はすでに一度番っていて、解消されているからもう2度と番になることはできない。発情期は再発して一生付き纏う。
運命の番は和人だけど、和人とは番うこともできない。
出会うのがもっと早かったら違ったかもしれないのに、こればかりはどうしようもないのだ。
運命が引かれ合う定めなら、きっと和人は来てくれると、一縷の望みを信じていた。
「来てくれたじゃないか」
「本当、そういうところずるい」と和人が苦笑いをする。
ずるいってなんだ。
僕は事実を言っているのに。
「運命が導いてくれたなら、もっと俺を安心させてくれよ」
「僕だって、こんなことになるとは思ってなかった。すぐに会えるって……思ってました。それに、発情期は予定ではまだ先だったから」
「俺が側にいるんだから触発されて早まったってことかなぁ?」
和人が首を傾げた。ベッドに座ってる僕の横に座って、「間に合ってよかったよ」と言って頭を撫でた。
発情期もヒートも全部を和人はもらうと言っていた。
「もう、返さないよ。俺は束縛するし、ドロドロに甘やかして、俺無しじゃいられなくしてしまうよ」
「……もう、そうなってる」
この1週間和人が甲斐甲斐しく世話をしてくれて、ご飯も作ってくれた。ご飯も作れないし、朝起きるのだって苦手だし、洗濯も得意じゃない。いってらっしゃいと送り出されるのも、おかえりと迎えられるのも、心地よいと思ってしまったから。もう、和人無しじゃいられなくなっている。
「後は、甘やかして」
和人を引き寄せるとそのままベッドに押し倒された。
ボロボロになったカバンを床に和人が下ろす。
「発情期を無理矢理抑え込んだけど、大丈夫?」
甘い香りはしない。和人からもしない。
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